・・・ さて客は、いまので話の口が解けたと思うらしい面色して、中休みに猪口の酒を一口した。……「……姐さん、ここの前を右へ出て、大な絵はがき屋だの、小料理屋だの、賑な処を通り抜けると、旧街道のようで、町家の揃った処がある。あれはどこへ行く・・・ 泉鏡花 「みさごの鮨」
・・・しかし日本も東京辺では四月末から五月初めへかけて色々な花が一と通り咲いてしまって次の季節の花のシーズンに移るまでの間にちょっとした中休みの期間があるような気がする。少なくも自分の家の植物界ではそういうことになっているようである。 四月も・・・ 寺田寅彦 「五月の唯物観」
・・・を一晩中休みなしに弾いていた。その様子が可笑しいというので、縁日を歩く人は大抵立止っては銭を投げてやった。二年三年とたつ中に瞽女は立派な専門の門附になって「春雨」や「梅にも春」などを弾き出したがする中いつか姿を見せなくなった。私は家の女中が・・・ 永井荷風 「伝通院」
・・・ *みんなふり出しでは、清浄であった一生懸命であったみんな中休みでは、まだ人生の希望をすてなかったみんなふり出しでは、健康であった心も、正しかったみんな、中休みでは・・・ 宮本百合子 「ものわかりよさ」
出典:青空文庫