・・・ 先月号の『行動』に婦人詩人中河幹子さんが、婦人作家評を執筆された。中で、私のことにもふれられ「獄中の人と結婚せられた心理はわかるようで不可能である。ああいうことはオクソクの他であるが、私は無意味であると思っている」と結論しておられる。・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・ 日本民族文化の優位性を誇張し、妄想する超国家主義の考えかたから、真の民族生活の存在のありかたをはっきり区別しようとして、横光利一をはじめ、亀井勝一郎、保田与重郎、中河与一等の「日本的なもの」へのたたかいを行っている。 一九三三年ナ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・ 同じ雑誌の、中河幹子さんの小論。女性の感情の深いところから生じる産児制限に対する質疑を暗示している点、自分と共通な或るものを筆者も持たれていると思い興味をもった。あれは未だ纏った考えと云うより、一つの暗示にすぎないから、女性中心思想に・・・ 宮本百合子 「是は現実的な感想」
・・・芥川、池谷、千葉賞のように、故人となった文学者の記念のための文学賞ばかりか、農民文学には有馬賞というのがあり、中河与一氏の尽力によって成立してその第一回受賞者は中河氏であった、大倉出資の透谷賞というのもあるようになった。 今度の事変が、・・・ 宮本百合子 「今日の文学と文学賞」
・・・ 様々な方向と傾向から通俗小説と私小説との問題は論ぜられたのであったが、現実生活と文学とにおける偶然と必然との関係の解釈は指導的な方向を持たず、遂に中河与一氏の偶然文学論へまで逸脱した。現実を「不思議」なる諸相の逆転として見ようとするこ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・横光利一、片岡鉄兵、川端康成、中河与一、今東光、十一谷義三郎等を同人とするこの「新感覚派」の誕生は、微妙に当時の社会的・文学的動きを反映したものであった。従来の文学的領野に於ては、依然として志賀直哉が主観的なリアリズムの完成をもって一つの典・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・また、自分の文学に指導性はないといいつつ中河与一は、ぼんやりとながらイギリス、アメリカなどの国家社会主義的経済統制を根源とするナショナル・サルベーションの傾向に興味を示している。これらは彼らによって討議された文学における行動性、指導性、民族・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・林房雄、中河与一氏などが音頭とりで、名称も懇話会よりは一層鮮明に、一傾向を宣言したものである。日に日に新たなる日本であるから、新日本主義も響きとして生新なようでもあるが、日本文学を新たな角度から把握しようとするその態度・方向においては、その・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
・・・となり、日本浪漫派の人々は亀井勝一郎、保田与重郎、中河与一を先頭として「日本精神」の謳歌によって文飾されたファシズム文学を流布した。女詩人深尾須磨子はイタリーへ行って、ムッソリーニとファシズムの讚歌を歌った。私は目白の家で殆ど毎日巣鴨へ面会・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・ ブルジョア探偵小説の一部としてのスパイ物語は正に国際的舞台を背景としている。中河与一の南洋紀行。吉行エイスケの中国もの。それぞれ、確に日本以外の外国をとり入れ、それを主題としている点では一見国際的であるらしく思える。 では、そうい・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学における国際的主題について」
出典:青空文庫