・・・動かない調子で話す児C 考え深い様な静かな声と身振りの児 場所小高い丘の上、四辺のからっと見はらせる所 時夏の夕暮に近い午後B、Cが丘の中程の木の切り株に並んで腰をかけて、編物・・・ 宮本百合子 「旅人(一幕)」
・・・光った藁のような金星銀星その他無数の星屑が緑や青に閃きあっている中程に、山の峰や深い谿の有様を唐草模様のように彫り出した月が、鈍く光りを吸う鏡のように浮んでいます。白鳥だの孔雀だのという星座さえそこにはありました。凝っと視ていると、ひとは、・・・ 宮本百合子 「ようか月の晩」
・・・僕に背中を見せて歩いていた、偶然の先導者はもう無事に玄関近くまで行っている頃、門と、玄関との中程で、左側のかなめ垣がとぎれている間から、お酌が二人手を引き合って、「こわかったわねえ」と、首を縮めてささやき合いながら出て来た。僕は「何があるの・・・ 森鴎外 「百物語」
出典:青空文庫