・・・には、これまでの詩の華麗流麗な綾に代る人生行路難の暗喩がロマンティックな用語につつまれつつ、はっきり主体をあらわしている。「野路の梅」にも同じ傾きとして、浮薄な世間の毀誉褒貶を憤る心が沁み出ている。これは、『若菜集』によって、俄に盛名をあげ・・・ 宮本百合子 「藤村の文学にうつる自然」
・・・とともに作者のソヴェト同盟での生活のひとこまを主体としている。社会主義的な自覚をもってきて作者は一九三〇年にまる二年あまり暮したソヴェト同盟から、日本へ帰えるべきか、それともそのままモスクへとどまってしまうかという一つの決定にせまられた。作・・・ 宮本百合子 「「広場」について」
・・・ 順序をふんで民主化が行われた国であれば勤労階級が主体となって進む民主主義は社会主義的民主主義である筈である。が中国、日本は、そうでない。ブルジョア独裁の民主主義でもなく、さりとてプロレタリア独裁の民主主義でもあり得ない中国、日本の今日・・・ 宮本百合子 「三つの民主主義」
・・・震災で演劇雑誌が全滅したので、劇作家協会が主体となり、新潮社から『演劇新潮』を発行。推されて一年間その編輯主任となる。「熊谷蓮生坊」「大磯がよい」「女中の病気」「スサノヲの命」。 一九二五年。松竹キネマ製作の映画「坂崎出羽守」は戯曲「坂・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・、三、「民主主義文学の主体はなにか」これら三つの基本的問題が、こういう問いの形でだされなければならなかった以上、小説部会の報告が創造活動についてただ記録し羅列する形しかとれず、発展的、鼓舞的なヒントを与えられなかったわけである。小説部会の報・・・ 宮本百合子 「両輪」
・・・それは単に肉体の一部分であるのではなく、肉体を己れに従える主体的なるものの座、すなわち人格の座にほかならない。 ここまで考えて来ると我々はおのずから persona を連想せざるを得ない。この語はもと劇に用いられる面を意味した。それが転・・・ 和辻哲郎 「面とペルソナ」
出典:青空文庫