・・・生れるという主格の受動性を示す文法上での表現は、とりも直さず我々人間が歴代、子として親を選択することも出来ず、誕生の環境を予測することも出来ず、実に受け身に生まれたのであるという深刻な現実における関係を語っている。而も、一旦生まれた以上、我・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・種々な傾向や種類の人中で自ら他と比較すれば、彼、或は彼女が、どんな性格、傾向であるか漠然とでも予測がつきましょう。 彼地のように、会合と云えば極特殊なものでない限り必ず男女ともに参集する処では、我国で、恐らく女同士、男同士あい、知人にな・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・ここは予測の通り余り気に入らず、豊後の臼杵へ廻った。臼杵から先、中津の自性寺を見、福岡の友でも訪ねるか、いずれにせよ、軽少の財嚢に準じて謙遜な望みしか抱いていなかった。臼杵の、日向灘を展望する奇麗な公園からK氏の別荘へぶらぶら帰る時であった・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
・・・そして階級作家の活動の多面性は、作家としての活動ということのうちに、予測をゆるさない行動性をふくんでいることもまた自明です。四 書記長の発言にわたしを評価することは他の党員作家のためにならないという意味があったようです。それはどうい・・・ 宮本百合子 「文学について」
・・・という論文の結論で、将来自由律の口語詩が「思想的な文学の、より自由な開花が社会的に保証さるべき時代に於て著しく発展するだろう、という予測」を示している。 詩の社会的位置という国際ペンクラブの一課題から入るだけでさえも、われわれの周囲の文・・・ 宮本百合子 「ペンクラブのパリ大会」
・・・ 来年も凶作があるかないかを予測するため、海へ船を出して天候を観測したりしている記事が大きい見出しに写真つきで華やかに新聞に出たが、あの報告で今年の秋を、みのりの秋と楽しく期待出来た人間は恐らく一人もなかったであろうと思う。東北地方の飢・・・ 宮本百合子 「村からの娘」
出典:青空文庫