・・・仙台堀と大横川との二流が交叉するあたりには、更にこれらの運河から水を引入れた貯材池がそこ此処にひろがっていて、セメントづくりの新しい橋は大小幾筋となく錯雑している。このあたりまで来ると、運河の水もいくらか澄んでいて、荷船の往来もはげしからず・・・ 永井荷風 「深川の散歩」
・・・ これを方今、我が国内にある上下二流の党派という。一は改進の党なり、一は守旧の党なり。余輩ここに上下の字を用ゆといえども、敢てその人の品行を評してこれを上下するに非ず。改進家流にも賤しむべき者あらん、守旧家流にも貴ぶべき人物あらん。これ・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・その点から見て、女性の手に成った文学的作品が、若し男性の手に成ったそれに比して常に第二流の芸術的価値ほか持ち得ないものとしたら、それはつまり女性が、人及び芸術家として、充分の創造をなし能う丈の人格も、生活をも持っていないと云う、一部の証言に・・・ 宮本百合子 「概念と心其もの」
・・・――彼も、ヴィクトリア時代の考証癖を脱し切れず、自分がこれはどう感じ見るかと思うより先に、シェークスピアやホーマーの文句を思い出し、そのものを徹し、その描写にまとめて、自分の直観に頼らない、第二流文学者――否、芸術家的素質しか持たなかったか・・・ 宮本百合子 「無題(四)」
・・・マリー・ローランサンは、彼女の幻想の花や少女を独特の灰色、白、桃色、黒緑で、粋に病的に描く。二流、三流の通俗画家が、凡庸な構図とあり来りな解釈とで、神話の男神、アポロー、パンまたは、キリスト教の聖徒などを描いた他、或る女流画家の特殊な稟性に・・・ 宮本百合子 「わからないこと」
出典:青空文庫