・・・律気らしく野暮にこぢんまりと引きしまった顔だが、案外に、睫毛が長く、くっきりした二重瞼を上品に覆って、これがカフェ遊びだけで、それもあっという間に財産をつぶしてしまった男の顔かという眼でみれば、なるほどそれらしかった。一皿十円も二十円もする・・・ 織田作之助 「雪の夜」
・・・温厚なる二重瞼と先が少々逆戻りをして根に近づいている鼻とあくまで紅いに健全なる顔色とそして自由自在に運動を縦ままにしている舌と、舌の両脇に流れてくる白き唾とをしばらくは無心に見つめていたが、やがて気の毒なような可愛想のようなまたおかしいよう・・・ 夏目漱石 「倫敦消息」
・・・彼の素晴らしい空想は、何時でもすきな時に私共を引攫って驚異の国の神、悪魔に、スフィンクスに引合わせる。彼の二重瞼の大きな眼は明るい太陽の真下でも、体中に油を塗りつけた宝玉商の Thengobrind が「死人のダイヤモンド」を盗もうとして耳・・・ 宮本百合子 「最近悦ばれているものから」
・・・荘重 山と峡谷 ○信州の女○眼比較的大 二重瞼で、きっとしたような力あり。野性的の感○蚕種寒心太製造 隣室の話 男、中年以上姉さんという女 もっと若い女、 芸者でもなし。品の・・・ 宮本百合子 「一九二七年春より」
出典:青空文庫