・・・この天皇制の尾骨のゆえに、一九四〇年ごろのファシズムに抗する人民戦線は、日本で理性を支えるいかなる支柱ともなり得なかった。『人間』十一月号に、獅子文六、辰野隆、福田恆存の「笑いと喜劇と現代風俗と」という座談会がある。日本の人民が笑いを知・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・経済、政治、文化の全面にわたって人民としての要求を貫徹し、日本の民主化を徹底させるための人民戦線、民主戦線ということが、私たちの現実的で発展性ある方法として、身近いものとなりつつある。人民は、自分の全生活について自分たちで判断・配慮し、分別・・・ 宮本百合子 「人民戦線への一歩」
・・・エレンブルグは非常にしばしばフランスその他国外に暮し、フランスが中心になって反ファシズム闘争の人民戦線運動をおこした当時、活溌なルポルタージュを発表した。ヨーロッパ資本主義の国々における民主的であり進歩的である集団と、ソヴェト同盟の達成との・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・「内容による検閲ということは当然そうなのですが、人民戦線以来、老狡になって文字づらだけではつかまえどこがなくなって来たので……」云々。「一番わるく解釈するのです」 本年は憲法発布五十年記念に当る年である。二月十一日には大祝祭を行・・・ 宮本百合子 「一九三七年十二月二十七日の警保局図書課のジャーナリストとの懇談会の結果」
・・・一九三三年プロレタリア文学運動が圧殺されて後、反ファシズムの運動として世界におこった人民戦線の活動が日本に伝えられたとき、治安維持法の脅威によって、日本における人民戦線の紹介者は、極力、「社会性を問題としない」人民戦線にとどめようとしました・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・明治以来の思想史の中で、近代的な市民生活の感覚と自分というものとを確立することの出来なかった日本の伝統は、一九三六年にファシズムに対する人民戦線運動が起った時にも、本当の生活感情から精神の自由と人間の基本的権利を守る為には、一つの政治的な行・・・ 宮本百合子 「前進的な勢力の結集」
・・・プロレタリア文学運動の窒息させられたあと、反ナチの人民戦線運動が日本にもつたえられた。これは、ドイツの封建的残滓の上に発生した封建的独裁に抗し、近代民主主義の基本的人権を主張した運動であった。が、日本では、プロレタリア文学運動をうちこわした・・・ 宮本百合子 「誰のために」
・・・従って社会主義的リアリズムの問題が文学における階級性の消滅を意味するものであるように語られ、ひきつづき人民戦線の提唱された時も、先刻中野さんが報告でふれたように、この階級的基盤をぼやかしたため、日本の反ファシズムの文学運動は、フランスのよう・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・この姿を外にして私達一般人の人生はないのであるのに、それが抹殺されて、何のためにマダム・バタアフライのサクラ・バナやゲイシャや、フジサンのみを卑屈に修飾して提供しなければならないのであろうか。人民戦線が勝利して以来、フランス出版物の輸入をき・・・ 宮本百合子 「日本の秋色」
・・・例えばフランスではヒューマニズムの運動は政治上の人民戦線政府の確立を土台として、文学芸術の方向を強い力で反ファシズムの方向へ動かしている。フランスで文化擁護の大会が持たれたりしたことは、ロマン・ローランの最近の文化的活動の傾向と共にはっきり・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムの諸相」
出典:青空文庫