・・・四、今月十五日。なお御面倒でしょうが、同封のハガキで御都合折り返しお知らせ下さいますようお願いいたします。東京市麹町区内幸町武蔵野新聞社文芸部、長沢伝六。太宰治様侍史。」 月日。「おハガキありがとう。元旦号には是非お願いいたしま・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・ 主人も今朝は、七時ごろに起きて、朝ごはんも早くすませて、それから直ぐにお仕事。今月は、こまかいお仕事が、たくさんあるらしい。朝ごはんの時、「日本は、本当に大丈夫でしょうか。」 と私が思わず言ったら、「大丈夫だから、やったん・・・ 太宰治 「十二月八日」
・・・ ――はなはだ、僕は、失礼なのだが、用談は、三十分くらいにして、くれないか。今月、すこし、まじめな仕事があるのだ。ゆるせ。太宰治。―― 玄関の障子に、そんな貼紙をした事もある。いい加減なごまかしの親切で逢ってやるのは、悪い事だと思っ・・・ 太宰治 「新郎」
・・・同じころ、突如一友人にかなりの金額送って、酒か旅行に使いたまえ。今月の小使銭あまってしまったのです、と本心かきしたためた筈でございましたが、また失敗。友人、太宰にやましきことあり、そのうち御助力たのみに来るぞ、と思ったらしく、この推察は、の・・・ 太宰治 「創生記」
・・・この辺の気持ちお察し下さい。今月末まで必ず必ずお返しできるゆえ、××家あたりから二十円、やむを得ずば十円、借りて下さるまいか? 兄には、決してごめいわくをおかけしません。「太宰がちょっとした失敗をして、困っているから、」と申して借りて下さい・・・ 太宰治 「誰」
・・・例えば今月中少なくも各一回の雨天と微震あるべしというごとき予報は何人も百発百中の成効を期して宣言するを得べし。ここに問題となるは予報の実用的価値を定むべき標準なり。 予報によりて直接間接に利便を感ずべき人間の精神的物質的状態は時並びに空・・・ 寺田寅彦 「自然現象の予報」
・・・懐手をして肩を揺すッて、昨日あたりの島田髷をがくりがくりとうなずかせ、今月一日に更衣をしたばかりの裲襠の裾に廊下を拭わせ、大跨にしかも急いで上草履を引き摺ッている。 お熊は四十格向で、薄痘痕があッて、小鬢に禿があッて、右の眼が曲んで、口・・・ 広津柳浪 「今戸心中」
・・・の劇痛におけるが如きものあらんといえども、今年今月の農工商をふるわしめんとて、にわかにその教育の組織を左右すればとて、何の効を奏すべきや。またあるいは天下の人心が頑冥固陋なり活溌軽躁なりとて、その頑冥軽躁の今日において、今の政治上に妨あるも・・・ 福沢諭吉 「政事と教育と分離すべし」
・・・一千九百二十五年五月六日今日学校で武田先生から三年生の修学旅行のはなしがあった。今月の十八日の夜十時で発って二十三日まで札幌から室蘭をまわって来るのだそうだ。先生は手に取るように向うの景色だの見て来ることだの話した。・・・ 宮沢賢治 「或る農学生の日誌」
・・・あと四時間やれば、もうこの地方は今月中はたくさんだろう。つづけてやってくれたまえ。」 ブドリはもううれしくってはね上がりたいくらいでした。 この雲の下で昔の赤ひげの主人も、となりの石油がこやしになるかと言った人も、みんなよろこんで雨・・・ 宮沢賢治 「グスコーブドリの伝記」
出典:青空文庫