・・・も一般人の生活の歴史に重大な関係をもつ社会事相に敏速に応じ、それを正当な方向において、歴史の意味するところを報告し、より正確で深い人間性に迄ふれて一般人に各自のおかれている現実関係を理解させようとする任務を持っている。 今日、諸雑誌や新・・・ 宮本百合子 「明日の言葉」
・・・レーニンの言葉を引用して、歴史の事実をゆがめ、労働者階級の任務を歪曲した議論がまとめられていることに、多くの人が驚きました。 知識欲のさかんな若い人々、レーニンが云っているように向上心にもえ、階級の武器として、あらゆる知識をもちたいと思・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・ 婦人が性の本然として生殖の任務をもっているということと、女は家庭にあるべきものという旧来の考えかたと、婦人が今日の社会事情の現実によって課せられている勤労の必然と、この三つのものは現代では未だ非常な紛糾、混乱した関係におかれていると思・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・民主主義革命とその文学とは、日本の全人民の、民主的な人間革命をこそ、広汎で重大な任務としてできる限りの熱意で達成してゆかなければならない。民主的で、人間的な社会進歩に対する善意を、普通の市民的標準の意志と肉体の堅忍とで保ってゆくことができる・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・要は、食うためにはそれもしかたがない、という過去、あるいは現在の諸条件を、生存するばかりか人生のための仕事なのだからこそ、ここまで高まらなくてはならないと社会的に主張し、努力してゆくのが、私たち作家の任務であると知らしてきていると思う。・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・父は医者であるが、医者は病気というものをこの人生から駆逐する任務を持っているという確信で動いていた。父の日常の動作に「報酬のため」或いは「生活費のため」という影のさしたことをかつて見たことがない。報酬はもちろん受ける、しかし自分の任務を果た・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
・・・ 根に対する情熱を鼓吹し、その根の本能的に好むところの土壌のありかを教え、そうして幾千年来堆積している滋養分をその根に供給してやるのが教育の任務である。特に大学教育の任務である。 大学が植木鉢に堕するか否かは、人の問題であって制度の・・・ 和辻哲郎 「樹の根」
・・・それは生命の流動に統一ある力強さを与えるべく、また生命の発育を健やかな豊満と美とに導くべく、生活にとって欠くべからざる任務を有する。これなくしては人は意識の混沌と欲求の分裂との間に萎縮しおわらなくてはならぬ。人が何らか積極的の生を営み得るた・・・ 和辻哲郎 「『偶像再興』序言」
・・・――この点を明らかにするのが第一の任務である。 一般民衆が圧抑に対する反動をもって動くときには、ともすれば群集心理的の浮ついた気分になって、芸術を受用し得るような心の落ちつきを失うものである。しかし民衆の教養は、西ヨーロッパにおいては、・・・ 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
・・・への奉仕とともに、真実の人類への奉仕であることを、そうしてそれが自己の任務づけられた、自己の分担し得る人類への奉仕であることを、明白に自覚している。この自覚を岸田君は切実なる内生の告白として表現しているのである。 美への奉仕はすなわち人・・・ 和辻哲郎 「『劉生画集及芸術観』について」
出典:青空文庫