・・・彼女は、自分の家の地位が低いために、そういう金持の間に伍することが出来ないように、自から、卑下していた。そして、また、実際に、穢いドン百姓の嚊と見下げられていた。 やがて、汽車が着くと、庄屋や、醤油屋や、呉服屋などの坊っちゃん達が降りて・・・ 黒島伝治 「電報」
・・・これらの学者がもし広い眼界の中で自由にのびのびとした教養を受けることができたのであったら、十七世紀の日本の思想界は、十分ヨーロッパのそれに伍することができたであろう。それを思うと、林羅山などが文教の権を握ったということは、何とも名状のしよう・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・キェルケゴオルもまたその内に伍するのである。 この書の成るに当たって、永い間本を借してくだすった井上先生、大塚先生、小山内薫氏、本を送ってくだすった原太三郎氏、及び本の捜索に力を借してくだすった阿部次郎氏、岩波茂雄氏に厚くお礼を申し・・・ 和辻哲郎 「「ゼエレン・キェルケゴオル」序」
出典:青空文庫