・・・うんぬん、とあって、ちゃんとそのT氏の自宅においてT氏と会談したことになって記述されていたのである。 この二つの実例から見ても新聞記事にはちゃんとした定型が確立されていて、いかなる場合にでもそれを破ることが禁ぜられているらしく思われるの・・・ 寺田寅彦 「ジャーナリズム雑感」
・・・ 僕が文壇の諸友と平生会談の場所と定めて置いた或カッフェーにお民という女がいた。僕が書肆博文館から版権侵害の談判を受けて青くなっている最中、ふらりと僕の家にたずねて来て難題を提出したのはこのお民である。 お民が始て僕等の行馴れたカッ・・・ 永井荷風 「申訳」
・・・かつて保護観察所長をしていた思想検事の長谷川劉が、現在最高裁判所のメムバーであって、さきごろ、柔道家であり、漫談家、作家である石黒敬七、富田常雄などと会談して、ペン・ワン・クラブというものをつくることを提案している。名目は、腕力のあるペン・・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・松岡駒吉氏たちは、宝塚会談で繊維労働者の民主的な生活への見とおしを売りわたして、今日北白川宮邸に住む身となっている。日本経済復興をだしに武器製造から繊維の儲けに移った業者と腹を合わせた社会党の政府が、この課題を人民の目の前でどうとりさばくか・・・ 宮本百合子 「その檻をひらけ」
・・・「私が誰かの作品を読むというのは、教養が高くひとと会談する術をわきまえている人を私の家へ入れるのと同様である。ところでバルザックさんは、技芸辞典かドイツ哲学史提要か自然科学辞彙かのようなもの言いをする。たまたまそういう暗号のような言葉を使わ・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
出典:青空文庫