・・・この虫のように自分の体重の何倍もある金属を食って、その何十プロセントを排泄するというのは全く不思議というより外はないであろう。 何のために鉛をかじるかが疑問である。送電線の被覆鉛管の内部にどんなものがはいっているか、そんなことを虫が知っ・・・ 寺田寅彦 「鉛をかじる虫」
・・・それでこういう際はかかとを浮かして足の裏の前半に体重を託してあるけば安全だということを発明したわけである。人造石がかわいている場合にはもちろんすべる心配はない。たぶん適当な軟泥の層をかぶっている事が条件であるらしい。しかしもしも軟泥の層が単・・・ 寺田寅彦 「日常身辺の物理的諸問題」
・・・ 連れて来た赤坊たちは、まず第一の室ですっかり着ているものをぬがされ、互にまだ性別のない体をあどけなく眺めあいながら、体重を計られ、検温され、やがてすっかり托児所そなえつけの衣服をきせられる。 赤坊たちは、未来の闘士も婦人技術家もズ・・・ 宮本百合子 「砂遊場からの同志」
・・・が、最後には僅か九貫目の体重になって死んだ。戸坂潤は、栄養失調から全身疥癬に苦しめられて命をおとした。ひろ子は、これらの話をきいたとき泣いた。重吉と自分とに与えられた愉悦に対して謙遜になった。これらの人々はどんなに生きたかったであろうか、と・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・風呂、体重計量器。「次は、陣痛室ですが……」 戸のハンドルをそーっとあけた。広い、白い壁の室だ。足と足とをつき合わせる位置に、ひろく間隔をおいて、幾つも寝台が並んでる。どれも真新しいシーツにおおわれ、いざと云えば直ぐ役に立つように出・・・ 宮本百合子 「モスクワ日記から」
出典:青空文庫