・・・ちょうど三郎も作画に疲れたような顔をして、油絵の筆でも洗いに二階の梯子段を降りて来た。「御覧、お前たちがみんなでかじるもんだから、とうさんの脛はこんなに細くなっちゃった。」 私は二人の子供の前へ自分の足を投げ出して見せた。病気以来肉・・・ 島崎藤村 「嵐」
・・・ 津田君は先達て催した作画展覧会の目録の序で自白しているように「技巧一点張主義を廃し新なる眼を開いて自然を見直し無技巧無細工の自然描写に還り」たいという考えをもっている人である。作画に対する根本の出発点が既にこういうところにあるとすれば・・・ 寺田寅彦 「津田青楓君の画と南画の芸術的価値」
・・・モティーフを、自身の感情の奥深くまで沈潜させ、すっかりわがものとしきらなければ作品として生み出さない画家、決してただ与えられた刺戟に素早く反応して自分の空想に亢奮したままに作画してゆくような素質の芸術家ではなかったこと、これはケーテにとって・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・とを区別したことは、君の作画の態度と照合して注目に価する。一般に意味せられている写実とは、「事実」を写すのである。しかし芸術の名に価する写実は「真実」を写したものでなくてはならない。そうしてこの「真実」は写す人の心の内にある。同じ自然を写し・・・ 和辻哲郎 「『劉生画集及芸術観』について」
出典:青空文庫