・・・ 一人の女が小ブルジョア的な人道主義、偸安主義の生活を何かの必然的動機ですて、プロレタリア解放のために一つの役割をもって生活するようになれば、キット、生活の変化は恋愛と恋愛観の変化を起すにきまっている。 そうではありませんか? ・・・ 宮本百合子 「ゴルフ・パンツははいていまい」
・・・らゆる現実を落着いて自分たちの経てゆく生活史のなかにうけとりつつ、歴史に消耗されず、そこからめいめいの建設を見出してゆかなければならない、そのような今日の時代の鍛錬が今日の若い世代を、小市民らしい自己偸安に成長した前世代人より、立ちまさった・・・ 宮本百合子 「生活者としての成長」
・・・しかし坐って論じている人々は、歴史の必要性というものを自身の偸安の便利な云いわけにつかった。この時代、ゴーリキイはコロレンコに近づき、コロレンコに於て、信頼するに足るインテリゲンツィアのタイプを見出したのではあったが、当時の不健全な傾向とし・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・ニージュニイのこれらの連中のある者はマルクス主義に近づくや否や個人主義的毒素や利己主義や偸安で勝手にマルクスの理論をゆがめ、多くの者は唾棄すべき卑俗な「唯物論者」になり下った。彼らは一人一人の革命家が生死を賭してツァーリズムとたたかった前時・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・ ヒューマニズムとは、勇気と沈着さとで我々がおかれている現実の環境とその推移の本質を見とおし、恋愛においても、偸安に便利な条件を左顧右眄して探すのではなく、愛しうるひとを愛し抜こうとしてゆく人間の意志とその実践と、その過程に生まれてゆく・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
出典:青空文庫