・・・小作料は三年ごとに書換えの一反歩二円二十銭である事、滞納には年二割五分の利子を付する事、村税は小作に割宛てる事、仁右衛門の小屋は前の小作から十五円で買ってあるのだから来年中に償還すべき事、作跡は馬耕して置くべき事、亜麻は貸付地積の五分の一以・・・ 有島武郎 「カインの末裔」
・・・徴収した金は大衆がその中の一割とすこししか持っていない戦時公債を償還して、大企業銀行などをうるおす予定になっている。二万円の区切りは今日の円で二千円だといえばきわめて広汎な家庭が包括されて来るのである。 実にわかりやすく懐に突込まれる手・・・ 宮本百合子 「女の手帖」
・・・銀行、大企業が、9/10を所有している戦時公債を、財産税でとりあげた人民の金で償還しようとしている政府。そういう政府が、財閥的私的権力でないと云うものは恐らくないであろう。目前の食糧問題という全くの公的課題を、忍耐ふかき日本の人民は、日に日・・・ 宮本百合子 「逆立ちの公・私」
・・・その公債を償還するといえば、そのいきさつは最も単純な頭でも判断される。政府は、右の手から取った金を、同じ人間の左の手に握らせ、返してやるのだということは。……軍需生産に対する補償にしても、右の足に穿いていた下駄を、左にはきかえるというだけの・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・もとは坪百円で建った家が今は二百円かかるという厚生省の意見はもっともだけれど、家というものは三年か四年すれば元金は償還すると常識では私たちに教えている。今回厚生省のきめる家賃は、一つ一つの新建家屋について何年目かには引下げを条件としてのこと・・・ 宮本百合子 「私の感想」
出典:青空文庫