・・・ いかなる天才が、これに優れる素朴の技巧を有したであろうか? 巧まずしてしかも、鋭敏。彼等が、これを口ずさむ時は、生活の肯定であった。支配者に対する反抗であった。しかも、また、自らの作業を捗らせるための快い調でもあった。故に、喜びがあり、悲・・・ 小川未明 「常に自然は語る」
・・・上杉謙信がそれを見て嘲笑って、信玄、弓箭では意をば得ぬより権現の力を藉ろうとや、謙信が武勇優れるに似たり、と笑ったというが、どうして信玄は飯綱どころか、禅宗でも、天台宗でも、一向宗までも呑吐して、諸国への使は一向坊主にさせているところなど、・・・ 幸田露伴 「魔法修行者」
・・・一 女は容よりも心の勝れるを善とすべし。心緒無レ美女は、心騒敷眼恐敷見出して、人を怒り言葉※て人に先立ち、人を恨嫉み、我身に誇り、人を謗り笑ひ、我人に勝貌なるは、皆女の道に違るなり。女は只和に随ひて貞信に情ふかく静なるを淑とす。・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
出典:青空文庫