・・・兎に角、一人の公民として立派に生活して行ける丈の実力がありさえすればよいと云う実際的方面から向って行きます。そこに、アメリカ人の実に自由なよい処と、又、実に堪らない俗臭とがある訳ですが、親が、子供を、或る年齢で一人前と認め得ることを理想とし・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・然し、今日の我々から見ると、彼自身も亦、彼の書いた英雄共と種々な角度に於て交渉を持った一公民としての、心情を吐露して居る。 家を引越し、もう少し周囲の高級な、部屋ももう一つ位多い処へ行きたい希望がある。然し、目下の所、いつ其が実現さ・・・ 宮本百合子 「小さき家の生活」
・・・食糧問題についても、三合配給、お菜をたっぷり、牛乳を子供へ、などと語られているが、現在の配給機構へ実際婦人が入って改善してゆくためには、婦人の公民権が認められなければならないと主張している婦人代議士は一人もいない。山口シヅエという婦人代議士・・・ 宮本百合子 「春遠し」
・・・生産手段の独専所有にたいする制限のないことも手落ちであるし、男女平等という、婦人の心につよく訴える規定のなかに、社会的平等の地盤となる同一労働に対する同一賃金の必要や、まだ日本に決められていない婦人の公民権のことなどが明確にあらわされていな・・・ 宮本百合子 「矛盾とその害毒」
・・・日本では、婦人が地方自治体の政治に干与するための公民権さえも持たなかった。つい先頃一九三〇年全国町村長会議は、婦人の公民権案に反対を表明している。翌一九三一年満州に対する日本の侵略戦争が始まった。それからというものは、誰も知る通り、日本にお・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫