・・・なぜなれば、すべてこれらは国法によって公認、もしくはなかば公認されているところではないか。 そうしてまた我々の一部は、「未来」を奪われたる現状に対して、不思議なる方法によってその敬意と服従とを表している。元禄時代に対する回顧がそれである・・・ 石川啄木 「時代閉塞の現状」
・・・そこで、田島はその生活費の補助をするという事になり、いまでは、築地の寮でも、田島と青木さんとの仲は公認せられている。 けれども、田島は、青木さんの働いている日本橋のお店に顔を出す事はめったに無い。田島の如きあか抜けた好男子の出没は、やは・・・ 太宰治 「グッド・バイ」
・・・しかし今までのところでまだ学芸方面において世界第一人者として、少なくとも公認されたものの数のはなはだしく希少なことについては、これにはまたいろいろの「事情」があるようである。 今ここでこの事情なるものの分析を試みるべき筋ではないが、とも・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・すなわち哲学の私情は立国の公道にして、この公道公徳の公認せらるるは啻に一国において然るのみならず、その国中に幾多の小区域あるときは、毎区必ず特色の利害に制せられ、外に対するの私を以て内のためにするの公道と認めざるはなし。たとえば西洋各国相対・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
・・・そういう愛情は日本の社会でいわば公認の愛の局面であるが、自分に向けられる母の愛、気づかい、心配などを、有難いとともに漠然負担に感じないで暮している娘さんたちが今日はたして何人あるだろうか。日本の女の自己犠牲の深さということを一方においてみる・・・ 宮本百合子 「女の自分」
・・・ 自分の公認処女作は「貧しき人々の群」というので大正五年に『中央公論』に発表された。 福島の田舎におばあさんが独りで暮していた。小学校の一年ぐらいから夏休みになると、海老茶の袴をはいて、その頃は一つ駅でも五分も十分も停る三等列車にの・・・ 宮本百合子 「「処女作」より前の処女作」
・・・いから、たとえば文化面における戦争協力の責任追求も、実にいい加減なものだし、追求されたそれぞれの文学者たちがまた一向本質的な痛痒を感じないで、武者小路実篤のように平気で、その平気さをブルジョア文壇から公認されているか、さもなければ石川達三の・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
出典:青空文庫