・・・それに公開の裁判でもすることか、風紀を名として何もかも暗中にやってのけて――諸君、議会における花井弁護士の言を記臆せよ、大逆事件の審判中当路の大臣は一人もただの一度も傍聴に来なかったのである――死の判決で国民を嚇して、十二名の恩赦でちょっと・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
序ぼくは農学校の三年生になったときから今日まで三年の間のぼくの日誌を公開する。どうせぼくは字も文章も下手だ。ぼくと同じように本気に仕事にかかった人でなかったらこんなもの実に厭な面白くもないものにちがいな・・・ 宮沢賢治 「或る農学生の日誌」
・・・東大でも、伊藤ハンニまがいの山師がでているし、きわめてエクセントリックな性格と生活態度の女子学生が大阪の実家で弟に殺されたという事件があったし、法科の学生が教室でエロティックな映画を公開したというおどろくべきこともありました。女子の学校など・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・ひところ、あの映画もこの頃の情勢で公開されないかもしれないなどと言われていたが、ともかく観ることが出来てうれしかった。 ずっと昔、リリアン・ギッシュが主演して大好評であった「ブロークン・ブラッサム」という映画があった。日本のタイトルは何・・・ 宮本百合子 「映画の語る現実」
・・・ソヴェトの裁判が公開であるということ、監獄が、後れた労働者をよい労働者に仕上げて出すためのところと考えられているということ、獄衣などないこと等、こまかく一つ一つ日本の有様とひき比べての演説は実に聞いていて飽きません。たとえば共産党の公判が、・・・ 宮本百合子 「共産党公判を傍聴して」
・・・ところが技術の進歩につれ、だんだん公開の演奏会へも出られるようになり、夫人の仕事はいつしか邸内の音楽室から公会堂へまでうつり、よりひろい社会関係の間に露出されて来ています。 また、先頃フィリッピンのバシラン島附近で高麗鶯の新種を発見して・・・ 宮本百合子 「現実の道」
・・・少年らのグループが作家の団体へ、あなた方の文学上の才能を、未来の担い手であるわれわれのためにもっと十分発揮してくれ、という公開状をよせたりして、この問題は活溌な注目の下にあった。この場合は、もちろん、昔の化物話や泥棒などではない、新しい社会・・・ 宮本百合子 「子供のために書く母たち」
・・・彼等はラジウム精錬の特許を独占して驚くべき富豪になる代りに、人類へその科学上の発見を公開して、キュリー夫人は五十歳を越してもソルボンヌ大学教授としての収入だけで生活して行った。キュリー夫妻の人間としての歴史的な価値は、その十五分ほどの間の判・・・ 宮本百合子 「これから結婚する人の心持」
・・・従って、ジイドが利用しようと努めているような統計や自己批判の公開もしないわけである。ところがそれがなされている。ジイド自身が描き出しているこの矛盾は、おのずからジイドによって描かれているとは異った現実のあることを読者に感じさせるのである。ジ・・・ 宮本百合子 「こわれた鏡」
・・・美術学校に公開の美術図書館があり、帝大に医学、文学等の公開図書館があるという工合でも、一般の蒙る便宜は随分多いだろうと思う。旧大名の華族たちが、只虫干をするだけで蔵にしまっている古文書類ももっと天下に役立てられなければならないし、特殊な生産・・・ 宮本百合子 「実際に役立つ国民の書棚として図書館の改良」
出典:青空文庫