・・・お民の態度は法律の心得がなくては出来ないと思われるほど抜目がなく、又其の言うところは全然共産党党員の口吻に類するものがあった。 書肆博文館が僕に対して版権侵害の賠償を要求して来た其翌日である。正午すこし前、お民は髪を耳かくしとやらに結い・・・ 永井荷風 「申訳」
・・・十九世紀以来、世界は、帝国主義の時代たると共に、階級闘争の時代でもあった。共産主義と云うのは、全体主義的ではあるが、その原理は、何処までも十八世紀の個人的自覚による抽象的世界理念の思想に基くものである。思想としては、十八世紀的思想の十九世紀・・・ 西田幾多郎 「世界新秩序の原理」
・・・思想方面では、レーニンやトロツキイの共産主義者を始め、それの対蹠であるファッショや強権主義者等までが、多少みな間接にニイチェの影響を蒙つて居る。文学の方面では、ドストイェフスキイや、ストリンドベルヒや、アルチバセフや、アンドレ・ジイド等が、・・・ 萩原朔太郎 「ニイチェに就いての雑感」
・・・もう一つのコムソモール・ヤチェイカというのは、共産青年同盟細胞という意味である。 私は二つめの戸を入って行って、そこに書きものをしている若い婦人労働者に、「今日は」と云った。「私は日本からきたんですが、これをみて下さい」・・・ 宮本百合子 「明るい工場」
・・・ 一九二〇年代のドイツは、左翼が活躍し、ドイツ共産党も公然と存在していた時代であった。その時代に育ったエリカ・マンが民主主義の精神をもち、日に日につのるナチスの暴圧に反抗を感じたのは自然であった。エリカ・マンは、はじめ小論文や諷刺物語を・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・そして、「兵は、共産主義者の反乱鎮圧のために配備されているのだと信じこんでいた」というようなことも平然と書かれ、こんにち政府が共産党鎮圧の空気を挑発しているのと、おのずからマッチするようにあらわれて来ている。 わたしたちのファシズムとの・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・その後野沢富美子さんは、さまざま生活の波瀾に苦しい経験を重ねた末、一九四五年共産党に入党した。それから結婚した。党員小池富美子として発表された「女子共産党員の手記」は、まだ多分に、この作者が幼時の環境からしみこまされていたアナーキスティック・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十五巻)」
・・・江口渙、壺井繁治、今野大力などアナーキストであった作家詩人が、次第に共産主義に接近しつつあった。無産派文学団体の改組が頻繁に行われた。第一次大戦後のドイツではこの一九二三年にあのインフレーション、マークの下落が起った。その情勢が、ドイツ・フ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」
・・・で、ブルガーコフは、一部の共産党員が考えている性急で単純な世界革命の希望を批判し、諷刺している。 確に、この大仕事はそう雑作なく行きはしないのだ。 だが、果して、世界革命はブルガーコフのように諷刺しやゆしてしまうだけのものだろうか?・・・ 宮本百合子 「新たなプロレタリア文学」
・・・ 小説の冒頭には、ワシントン百年祭当日、アメリカの共産党によって指導された民衆の、中国から手をひけ、ソヴェト同盟を守れ、とスローガンをかかげた大衆的示威運動の光景が描かれ、チャーリー中野もそれに参加したと紹介されている。ニューヨークの反・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
出典:青空文庫