・・・どうせ共稼ぎの結婚なんて馬鹿くさくて、という愛子は妙な男づきあいをしつつ、失業とともに喫茶ガールになってゆく。シゲは全く古い職人肌の亭主をもって、脚気の乳をのまして赤ン坊に死なれたり、これまでの工場が駄目になると、只身を落した気易さだけに満・・・ 宮本百合子 「徳永直の「はたらく人々」」
働いている婦人は、そういう生活につかれているところもあって、結婚したら家に落付き余り苦労したくなく思うのもわかりますが、実際にはその人と心持が合えば、共稼ぎで辛棒してゆく生活態度でなくては、幸福になる機会さえ逃してしまうの・・・ 宮本百合子 「働く婦人の結婚について」
・・・日本のきょうの社会ではヤミのシャンパンはメチールをまぜてキャバレーの床に流れても、つつましい共稼ぎの若い夫婦の人生を清潔に、たのしくさせるカフェテリヤもなければ、オートマットもない。きょう、やかましい産児制限のことも、こうして、住む家をもた・・・ 宮本百合子 「離婚について」
・・・ 若い女のひとが結婚の相手として、先ず経済上の安定をもち出して、共稼ぎをしてやって行こうというよりは、この物価の高いとき五十円六十円では赤坊も育てては行かれないと、妙につよく主張する心持の底にも、その程度までは目があいて来てしかもそれか・・・ 宮本百合子 「若い世代の実際性」
・・・ さいわい、互に働いている男女が愛し合うとして共稼ぎということが問題となって来る。医学博士の安田徳太郎氏は六七十円の共稼ぎで、女が呼吸器を傷う率が高いことをいっていられた。今日の社会では女が働いてかえってきて、やっぱり一人前に炊事、洗濯・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
出典:青空文庫