・・・子供があるからこそ、働く必要は一層痛切だのに、その子供のために勤められず、まとまった内職も出来ないという事情のために生れている悲劇はどんなに多いでしょう。民法が改正され、結婚の自由、離婚の自由が認められようとしていますが、現実の社会に、母と・・・ 宮本百合子 「今年こそは」
・・・そして内職しながら保護法もうけて生計を保っている未亡人と子供が全体の八五%を占めているといえば、ますますひどい金づまりと税の不安で、最も悲惨の加わるのは農村の身よりにたよって生きる未亡人と子供たちではないでしょうか。 子もちの婦人のため・・・ 宮本百合子 「願いは一つにまとめて」
・・・金モール内職のベットがマルヌッフのサロンでは、俄然ダイアモンドのような輝きを発揮しはじめたり、奇怪な老婆がいきなり登場したり、ユロ将軍の最後の条などは、明らかに前章に比してなげやりに片づけられている。つき進んで云えば、従妹ベットの心持が、あ・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・マリーナ・イワーノヴナは夫婦とも裁縫師で、ジェルテルスキーは妻のための内職を、マリーナ・イワーノヴナのところから貰って来ていた。今もいる。――恐らく彼が、片手でルパシカの胸を抱え、右手で頻りに金髪を撫でつつ、決心しかねている今の瞬間、若いダ・・・ 宮本百合子 「街」
・・・日本では昔からのしきたりがこういうところへ作用していて、若い女は親の娘、良人の妻と考える方便が、近代の経営術のうちに巧にないこまれているから、働く方では一人前、しかし報酬は内職標準という割合がめやすとなっている。働かせはするが、仕事の本流で・・・ 宮本百合子 「ものわかりよさ」
・・・戦争による未亡人の生活の堂々めぐりのいたましさは、実に多くこういう急所が未解決な今日の社会事情からもたらされている。内職では食べてゆけない。内職では決して食べてゆけないのに、その内職がなければ一層窮迫する程度の賃銀しか支払わないのが、いまの・・・ 宮本百合子 「離婚について」
・・・その村で女が内職をして得る賃銀に均しいものに止めて置くことが最上の方策であると言われたのであった。こういう婦人の労働力の搾取の方法は、おそらく、今日の世界に類のないものであったろうと思う。 アメリカでも、ドイツでも、イタリーでも第二次の・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・ そうでないことの実際の証拠は昨今の学校教員の桃色内職事件でも明らかである。また諸官庁は元より、会社でもタイピストさえ年齢十七八歳、両親の家より通勤の者にかぎり採用が現実の有様であり、男の就職上の困難は、その困難が最も少い大臣の息子たちの新・・・ 宮本百合子 「私の感想」
出典:青空文庫