・・・ これらの文学的成功は、幾分でもバルザックの経済危機を緩和したであろうと誰しも推察するのであるが、彼の場合実際生活は決してそのように内輪に運転されなかった。一部をやっと返済したかと思うと、一方では負債の増大するようなことばかりが起った。・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・その内輪で、どちらかと云えば神経質な交渉の反覆を日頃経験している人々が、そういうこまかい利害からは埒外にあって、しかも今日の世の中では文学の仕事にたずさわる者に対して高飛車な朗らかさと率直さを示し得る背景の前にいる人々を眺めたら、一応それら・・・ 宮本百合子 「文学の大衆化論について」
・・・一人のひとの性質というものも生活環境の複雑な関係によって作用されているものであるのだから、久美子さんがそういう内輪な気質であるとしても、その気質にしたがって、別に目下生活問題として職業につかねば食うに困るということはない本間家の生活状態が反・・・ 宮本百合子 「短い感想」
・・・が終生頭についていた人であるから、金を蓄える方面は一向に駄目で、島根へ、役人として袴着一人をつれて行っていた暮しの間でも、米沢の家の近所のものには太政官札を行李につめて送ってよこすそうだと噂されつつ、内輪は大困窮。その頃の旧藩士と新政府とに・・・ 宮本百合子 「明治のランプ」
出典:青空文庫