・・・危険を冒すだけ損の訣ですね。」 大浦は「はあ」とか何とか云った。その癖変に浮かなそうだった。「だが賞与さえ出るとなれば、――」 保吉はやや憂鬱に云った。「だが、賞与さえ出るとなれば、誰でも危険を冒すかどうか?――そいつもまた・・・ 芥川竜之介 「保吉の手帳から」
・・・無し 他日奇談世尽く驚く 怪まず千軍皆辟易するを 山精木魅威名を避く 犬村大角猶ほ遊人の話頭を記する有り 庚申山は閲す幾春秋 賢妻生きて灑ぐ熱心血 名父死して留む枯髑髏 早く猩奴名姓を冒すを知らば 応に犬子仇讐を拝する無かる・・・ 内田魯庵 「八犬伝談余」
・・・神を冒す。いろいろの言葉があります。描写に対する疑惑は、やがて、その的確すぎる描写を為した作者の人柄に対する疑惑に移行いたします。そろそろ、この辺から私の小説になりかけて居りますから、読者も用心していて下さい。 私は、この「女の決闘」と・・・ 太宰治 「女の決闘」
・・・生死に関すると云う程でもなく、ちょいとした危険があるのを冒すのが、なんとも云えないように面白い。ポルジイはまだ子供らしく、こんなかくれん坊の興味を感じる。ドリスも冒険という冒険が好きだから、同じように嬉しがる。芝居のない日には、朝から晩まで・・・ 著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外 「世界漫遊」
・・・ この故にこれら四種の理想は、互に平等な権利を有して、相冒すべからざる標準であります。だから美の標準のみを固執して真の理想を評隲するのは疝気筋の飛車取り王手のようなものであります。朝起を標準として人の食慾を批判するようなものでしょう。御・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・ その点での誤謬を冒すことは非常に減って居り、その点ははっきりして居る。 フランスでは要するにブルジョア機構内で女が自分の性をどうしたら最も功利的に利用出来るかと考えている。 だからフランスの女権拡張運動というものはどういう状態・・・ 宮本百合子 「ソヴェトに於ける「恋愛の自由」に就て」
・・・その点での誤謬を冒すことは非常に減っており、その点ははっきりしている。 フランスでは要するにブルジョア機構内で女が自分の性をどうしたら最も功利的に利用出来るかと考えている。だからフランスの女権拡張運動というものはどういう状態にあるかとい・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
出典:青空文庫