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・・・沼南が外遊してからは書生の雑用が閑になったからといって、殊にシゲシゲと遊びに来た。写字をしたり口授を筆記したりして私の仕事の手伝いをしていた。面胞だらけの小汚ない醜男で、口は重く気は利かず、文学志望だけに能書というほどではないが筆札だけは上・・・
内田魯庵
「三十年前の島田沼南」
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・・・くさしめ、あえて他の能力の発育をかえりみるにいとまなく、これがために業成り課程を終て学校を退きたる者は、いたずらに難字を解し文字を書くのみにて、さらに物の役に立たず、教師の苦心は、わずかにこの活字引と写字器械とを製造するにとどまりて、世に無・・・
福沢諭吉
「文明教育論」