・・・ 民主的な作家が、この五年の間、活溌な報告者として自身の活動を展開できなかった一つの理由は、わたしたちが多くの点で、政治と文学との関係に処するに未熟だったからである。わたしたちの政治的な能力が低くて、あいまいであったために、民主主義革命・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
・・・ ここに極めて複雑である今日の雑誌ジャーナリズムの感覚とひいてはジャーナリストそのものが現代に処する文化的相貌の複雑さが反映していると思う。日本の文化、民衆の道は難航である。それがそっくりジャーナリズムに現れている。 明治の初頭、ジ・・・ 宮本百合子 「微妙な人間的交錯」
・・・恋愛に処する道について。職業婦人としての社会的進退について。四十年の社会の推移は、第二の「新女大学」に、おのずからこれらの項目をふやさしている。けれども、たとえば良人の貞潔の問題にしろ、女の側からとして説かれている場合には、本質的に何と男の・・・ 宮本百合子 「三つの「女大学」」
元文三年十一月二十三日の事である。大阪で、船乗り業桂屋太郎兵衛というものを、木津川口で三日間さらした上、斬罪に処すると、高札に書いて立てられた。市中至る所太郎兵衛のうわさばかりしている中に、それを最も痛切に感ぜなくてはならぬ太郎兵衛の・・・ 森鴎外 「最後の一句」
出典:青空文庫