・・・つまりきわめて安定のない婦人の経済的自主性を守りつづけてゆくために、彼女たちにとっても疑問が感じられたにちがいないファシスト的処世術にまけました。 この深刻な文化上の婦人の能力の利用されかたと、薄弱な婦人の経済的独立の基礎を考えるとき婦・・・ 宮本百合子 「戦争と婦人作家」
・・・ ヴィアルドオ夫人の美と才能とに対する傾倒、崇拝、女としての魅惑に対する愛着はもとよりのことであったろうが、ツルゲーネフはこの中流出身で芸術家としての処世上の苦労も知っているヴィアルドオ夫人なしでは全く何をどうすることも出来なかったらし・・・ 宮本百合子 「ツルゲーネフの生きかた」
・・・公平な立場から書かれた歴史を読むと、私共はシャヴィエル、ワリニヤニ等初期の師父――伴天連達が、神の福音をつげるに勇ましかったと同時、なかなか実際処世上の手腕をも具備していたことをしる。当時、その師父等と交誼のあった日本の君子等は、勿論知識と・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
・・・これらの事情は、映画企業に当る者、製作に当る人々の精神、感情、処世の智慧にも及ぶ関係をもっているのである。 既にはっきり予見されているこれらの困難を製作者と観衆とはどのようにのり越え、企業性や統制の方向と折衝してゆくであろうか。今日の社・・・ 宮本百合子 「観る人・観せられる人」
・・・これは処世法の最深刻なるものかも知れない。これに反して、人に余儀なくせられたのでなく、ことさらに自家の醜を白状した人が稀にはある。ルソオの如きがそれである。しかしルソオは精神病になり掛かっていたらしい。私の誤訳を指摘してくれられた人達の指摘・・・ 森鴎外 「不苦心談」
出典:青空文庫