・・・ 記載報告ということは文芸の職分の全部でないことは、植物の採集分類が植物学の全部でないと同じである。しかしここではそれ以上の事は論ずる必要がない。ともかく前いったような「人」が前いったような態度で書いたところの詩でなければ、私は言下に「・・・ 石川啄木 「弓町より」
・・・ 従って魔法を分類したならば、哲学くさい幽玄高遠なものから、手づまのような卑小浅陋なものまで、何程の種類と段階とがあるか知れない。 で、世界の魔法について語ったら、一月や二月で尽きるわけのものではない。例えば魔法の中で最も小さな一部・・・ 幸田露伴 「魔法修行者」
・・・私は、批評家たちの分類に従うと、自然主義的な私小説家という事になって居ります。それは、あなたが一口に高踏派と言われているのと同じくらいの便宜上の分類に過ぎませぬが、私の小説の題材は、いつも私の身辺の茶飯事から採られているので、そんな名前をも・・・ 太宰治 「風の便り」
・・・モンテーニュの論文をことごとく点字に写し取った中から、あらゆる思想や、警句や、特徴や、挿話を書き抜き、分類し、整理した後に、さらにこの著者が読んだだろうと思われるあらゆる書物を読んだり読んでもらったりして、その中に見出される典拠や類型を拾い・・・ 寺田寅彦 「浅草紙」
緒言 映画はその制作使用の目的によっていろいろに分類される。教育映画、宣伝映画、ニュース映画などの名称があり、またこれらのおのおのの中でもいろいろな細かな分類ができる。しかしこれらの特殊な目的で作られた映画・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・ 叙事と抒情とによって文学の部門を分けるのは、そういう形式的な立場からは妥当で便利な分類法であるが、ここで代表されているような特殊な立場から見れば、こういう区別はたいした意味を持たなくなる。 最も抒情的なものと考えられる詩歌の類で、・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・まずたくさんの山の中から火山を拾い出し、それを活火山と消火山に分類し、あるいは形態的にコニーデ、トロイデ、アスピーテ等に区別することは地質学者のほうで完成されているとしても、おのおのの山には多くの場合に二つ以上の名称がありまた一つの火山系の・・・ 寺田寅彦 「火山の名について」
・・・金相学上の顕微鏡写真帳も、そういうスケールを作るための素材の堆積であるとも言われよう、もし、あの複雑な模様を調和分析にかけた上で、これにさらに統計的分析を加えれば、系統的な分類に基づくスケールを設定することも、少なくも原理的には可能である。・・・ 寺田寅彦 「感覚と科学」
・・・これは動物学者が人為的に勝手な理屈から割り出してきめた分類によるからである。西洋人も日本人も同じ人間だという。しかしA博士の研究によると、日本人は血管の分布のしかただけから見ても明らかに西洋人とちがった特徴をもっているそうである。言わば違っ・・・ 寺田寅彦 「空想日録」
・・・その整理の第一歩は「分類」である。適当に仕切られた戸棚や引出しの中に選り分けられて、必要な場合に取り出しやすいようにされる。このようにして記載的博物学の系統が芽を出し始める。 分類は精細にすればするほど多岐になって、結局分類しないと同様・・・ 寺田寅彦 「言語と道具」
出典:青空文庫