・・・すも七十歳いかに強壮にましますとも百年のご寿命は望み難く、去年までは父上父上と申し上げ候を貞夫でき候て後われら夫妻がいつとなく祖父様とお呼び申すよう相成り候以来、父上ご自身も急に祖父様らしくなられ候て初孫あやしホクホク喜びたもうを見てはむし・・・ 国木田独歩 「初孫」
・・・娘たちが大きくなってからは、彼女たちのシェークスピアの詩の暗誦仲間であり、バーンズの共同の愛好者であった。初孫のジャンがいたずら盛りとなってからは、このジャンがマルクスの最も愛すべき支配者となった。エンゲルスとリープクネヒトが馬になり、カー・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・ 父かたの祖父は私が生れた時分、もう半身の自由がきかなくなっていて、床の上に坐ったまま初孫である赤坊の私を抱いて、おなごの子でも可愛いものだなあ、と云ったそうだ。二つ三つの時分、そうやってだかれていて、小さい孫はおしっこがしたくてべそを・・・ 宮本百合子 「繻珍のズボン」
・・・家としての初孫だから、私の姑にあたる年よりもたのしみなわけで、子供をもたない兄息子夫婦に、名をつけさせようと思いついたのでもあったろう。 私たちも珍しくさやいだ気持で、あれこれ案を出しあった。女の子の名というのは、いくつか思い浮んで候補・・・ 宮本百合子 「若い母親」
出典:青空文庫