・・・が、そこが空っぽで入れるものがないからという注文であったことが判明した。 本屋は早速見つくろって幾通りかの本をその書架につめたら、金額は四十円を超過して二百円ばかりかかった。しかし、その新邸の主人は、これで大層立派になったと云ってよろこ・・・ 宮本百合子 「見つくろい」
・・・筆者は誰なのかもとより判明していないが、その文章と対比して当の長谷川如是閑氏が、『改造』八月号に執筆していられる「帝国芸術院論」をよんだ読者の胸には必ずや或る感想が湧いたことであろうと思う。「帝国芸術院論」に於て、長谷川氏は、芸術そのも・・・ 宮本百合子 「矛盾の一形態としての諸文化組織」
・・・幸いその子は舅の末弟の息子であり、その妻君が離別された後ひきとられて育てられていたのだということが判明しました。 父は純真な性格の人で、三十歳ではあったがそれ迄道楽もせずにいました。互に諒解が行ったらしいが、明治三十二年の末頃生れて百日・・・ 宮本百合子 「わが母をおもう」
出典:青空文庫