・・・何故なら、この四五年のうちに、かつては利潤生活者であったインテリゲンツィアの或るものが今は三四十円の下級サラリーマンになって生活と闘っている事実はざらであるし、中学を出て後、もとなら苦学して高等学校へでも入ったようなものが、今日は経済事情の・・・ 宮本百合子 「今日の文学に求められているヒューマニズム」
・・・若い女から利潤をしぼり取る現実のしぼり手の姿を、家のためという言葉の雲のかなたに包みこませてしまうのである。ここにおいてわれわれはいかなる感情を「婦徳の輝き」に対して呼び起されるであろうか? 今一つここに注意すべきことは、現在の「非・・・ 宮本百合子 「今日の文化の諸問題」
・・・ソヴェトが一九一七年から十二年の星霜を経て、その深刻な根本的改変と建設との成果に立って、社会主義生産の段階に到達し、生産の全面と文化の全部門から利潤追求の企業性を排除しえたとき、国内的に勤労階級と有識人階級との対立、貧農と富農との対立が消え・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・その人々が欲するのは利潤であり、利潤につづく権力である。エロ・グロ、剣劇の興行政策をこれまで日本で最もいい制作をしていた東宝にもちこんで、近代的な社会感覚をもっている従業員たちを追いはらっている渡辺銕蔵が、教員の資格審査委員の一人であるとい・・・ 宮本百合子 「三年たった今日」
・・・ではないにしろ、科学的真理を現実の社会に活用してゆく力の階級性――それが幸福をねがい、平和をねがい、よき人生を求めている世界の働く人民であるか、それともありあまる富と権力とによってさらに強力なスリルと利潤とを、世界人類の基礎の上に一ばくちし・・・ 宮本百合子 「質問へのお答え」
・・・営利出版は一巻の紙から最も高率な利潤を求め、必ずうれることを求める。その結果一番うれる最低の安全性としてエロティシズムに陥っている。これは出版関係の専門家の解剖である。『星』や『レーニングラード』は営利雑誌ではない。先ごろ来朝していた作・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・そのジャーナリズムは、民主的要素を加えてきたのは確かですが、本質において資本主義のジャーナリズムであり営業として利潤を求めているものです。現在日本には文芸雑誌だけでさえ三百余種の雑誌が出ているそうです。中にはそうとう大きい同人雑誌も少くあり・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・出版ということは、利潤追求の手段となっていない程度であるかもしれない。しかし、文化のその状態は「春桃」に集められた作家たちの心に、食う食わぬをぬきにした創作の誠意を湧き立たせているように見える。 みずから山河巨大な中国に生れ合わした人民・・・ 宮本百合子 「春桃」
・・・第二次大戦によって利潤をうけた人々はその利潤を失うことを欲していないために、戦争挑発も行われているのが現実です。しかしヨーロッパや東洋の荒廃した国々の誰がこの上にも戦禍を重ねたいと思っているでしょう。真実に求められているのは平和です。平和を・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・だが、より窮屈に暮さなければならないのは一般の人民で、巨大なコンツェルンの利潤は一九五〇年六月以後の三ヵ月だけで、前年の第三、四半期に比べて五四%増加したそうである。 商業会議所の機関紙『ネイションズ・ビジネス』は十二月号で次の意味を記・・・ 宮本百合子 「「人間関係方面の成果」」
出典:青空文庫