・・・これはフィルムの上における速度の制限を考慮して、快速度のものは適当の距離から撮るべきである。これも舶来ものを参照すればわかるであろう。第四にはセットの道具立てがあまり多すぎて、印象を散漫にしうるさくする場合が多い。たとえば「忠弥」の貧民窟の・・・ 寺田寅彦 「映画時代」
・・・今回は紙数の制限もあるので以上の予備的概論にとどめ、ただ多少の見込みのありそうな一つの道を暗示するだけの意味でしるしたに過ぎない。従って意を尽くさない点のはなはだ多いのを遺憾とする。ともかくもかかる研究の対象としては火山の名が最も適当なもの・・・ 寺田寅彦 「火山の名について」
・・・ 同じようなわけで、大概の災難でも何かの薬にならないというのはまれなのかもしれないが、ただ、薬も分量を誤れば毒になるように、災難も度が過ぎると個人を殺し国を滅ぼすことがあるかもしれないから、あまり無制限に災難歓迎を標榜するのも考えものであ・・・ 寺田寅彦 「災難雑考」
・・・これは警察の方でとうに制限を加えたようである。 どんな勤倹な四民も年に一度のお花見には特定の「濫費デー」を設けた。ある地方の倹約な商家では平日雇人のみならず主人達も粗食をしていて、時々「贅沢デー」を設けて御馳走を食ったという話もある。も・・・ 寺田寅彦 「雑記(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・まりに立派な教育者としての素養があり過ぎるために、またその上に文部省の監督があまりに行き届き過ぎるために教場における授業が窮屈で煩瑣な鋳型にはいってしまって、その結果は自由に広大であるべきものを極端に制限してしまっているのではないかという疑・・・ 寺田寅彦 「さるかに合戦と桃太郎」
・・・ 実験室において行う簡単なる実験においてはこれら条件を人為的に支配し制限し得る便あり。しかも最も簡単なるデモンストレーション的実験においてすら、用意の周到ならざるため、条件のただ一つを看過すれば実験の結果は全く予期に反する事あるは吾人の・・・ 寺田寅彦 「自然現象の予報」
・・・われわれ階級の生活に許される程度のわずかな面積を泉水や植え込みや石燈籠などでわざわざ狭くしてしまって、逍遙の自由を束縛したり、たださえ不足がちな空の光の供給を制限しようとは思わない。樹木ももちろん好きである、美しい草花以上にあらゆる樹木を愛・・・ 寺田寅彦 「芝刈り」
・・・さて吾々の活力が外界の刺戟に反応する方法は刺戟の複雑である以上固より多趣多様千差万別に違ないが、要するに刺戟の来るたびに吾が活力をなるべく制限節約してできるだけ使うまいとする工夫と、また自ら進んで適意の刺戟を求め能うだけの活力を這裏に消耗し・・・ 夏目漱石 「現代日本の開化」
・・・この時、衣服の制限を立るに、何の身分は綿服、何は紬まで、何は羽二重を許すなどと命を出すゆえ、その命令は一藩経済のため歟、衣冠制度のため歟、両様混雑して分明ならず。恰も倹約の幸便に格式りきみをするがごとくにして、綿服の者は常に不平を抱き、到底・・・ 福沢諭吉 「旧藩情」
・・・儚い自分、はかない制限された頭脳で、よくも己惚れて、あんな断言が出来たものだ、と斯う思うと、賤しいとも浅猿しいとも云いようなく腹が立つ。で、ある時小川町を散歩したと思い給え。すると一軒の絵双紙屋の店前で、ひょッと眼に付いたのは、今の雑誌のビ・・・ 二葉亭四迷 「予が半生の懺悔」
出典:青空文庫