・・・、迷信はばかげたもの、と占いやまじないの話に子供の興味がひきつけられないようにしている母だのに、この白い鳩が座敷へ迷いこんで来て、偶然、神棚へとまって二三度羽ばたきし出て行ったということを、一つのいい前兆としてうけとった。道男という弟は、こ・・・ 宮本百合子 「道灌山」
・・・私は自分でもこれほど熱烈に世の中に出たがる心持は短命の前兆ではあるまいかというような気がする。誰にわかるものか!」 この年の九月にマリアは母や叔母たちおきまりの同勢でミケランジェロの四百年祭を見るためにイタリーのフロレンス市へ旅行した。・・・ 宮本百合子 「マリア・バシュキルツェフの日記」
・・・「私達はもうじきに別れ別れになる時が来るんだ、キット、今日はその前兆に違いない様に思われる」 お敬ちゃんは年をとった様な声で云った。「エエ、別れ別れで居たものがこうやって一緒んなったんだから又別れ別れになる事はあるかも知れないが・・・ 宮本百合子 「芽生」
出典:青空文庫