・・・しかし後期のものがすべての点において前期のものにまさっているとはいえない。ある時代には人性のある点は却って閑却され、それがさらに後にいたって、復活してくることは珍しくない。そしてその復活は元のままのくりかえしではなく必ず新しく止揚されて、現・・・ 倉田百三 「学生と教養」
・・・ただ同君の前期の仕事に抑々亦少からぬ衝動を世に与えて居ったという事を日比感じて居りましたまま、かく申ます。 幸田露伴 「言語体の文章と浮雲」
・・・なもの、無邪気なもの、天真爛漫な人生前期と提出している点、作者は極めて非プロレタリア的である。バイブルが「手袋なしには持てぬ」代物である通り、ブルジョア世界観によって偽善的に、甘ったるく装われ、その実は血を啜る残虐の行われている「子供の無邪・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・ あなたのおっしゃる前期的作品ですが。前期といえば「小祝の一家」も或意味で前期です。「乳房」は一つの過渡でした。「雑沓」に至るまでの。 全集目録は明日お送りいたします。「どてら」はおうけとりになったでしょう? 中野さんが大島へ行ったとは・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・であろうし そういう基礎的な人権は守られ、生命擁護もされているだろうそれにひきかえ日本では「憲法にいう 人権さえみとめられていない 「前期的 状態である」したがって、基本的人権の最も基本的なところ 生命の・・・ 宮本百合子 「東大での話の原稿」
・・・列の心理をいろんな面から考えてゆくと、やっぱり或る対比として心に浮んで来る。何をッという気勢は云わば互の気力の渡り合いで、気力のきついものが、時によっては理非をこえて勝をしめる。列の前期の世相の殺気めいたものだと思う。 列の感覚というも・・・ 宮本百合子 「列のこころ」
出典:青空文庫