・・・ 何しろ、ポムプへ引いてある動力線の電柱が、草見たいに撓む程、風が雪と混って吹いた。 鼻と云わず口と云わず、出鱈目に雪が吹きつけた。 ブルッ、と手で顔を撫でると、全で凍傷の薬でも塗ったように、マシン油がベタベタ顔にくっついた。そ・・・ 葉山嘉樹 「坑夫の子」
・・・若さは、この人物のうちにあって、瑞々しいというようなものではなく、もっと熱気がつよく、動力蒸気の噴出めいている。 話しの合間合間に交えられる手振も徳田さん独特だし、その手の指には網走の厳しい幾冬かが印した凍傷の痕があるのである。大いに笑・・・ 宮本百合子 「熱き茶色」
・・・身のまわりに渦巻く現象が新しい要素を加えてめまぐるしくなればなるほど、わたしたちは、そのめまいを起させるような現象の底にある社会的動力をつかんで全体を理解しようと欲するし、その動力の本質を、よりよいものへ、より人間らしい方向へ働き得るものに・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十五巻)」
・・・それらのことを、穢い、寒い板壁に向って感じた時も私の心に湧いた疑問は、藤村がしんから力を入れて、ねばっている動力は何なのであろうか。本質的には世故にたけた、十分妥協性をもったものなのだが、それを語る語りかたの独特に意識ある態度のために風格が・・・ 宮本百合子 「鴎外・漱石・藤村など」
・・・ヴォルガ地方がソヴェトの動力です。モスクワで、ソヴェトの生粋の人間なんかは見られない。モスクワには商人か、小ブルジョアしかいません!」 思わずわたしは笑いだした。 これは余り、農民作家的ではないか! この男は、世界革命はヴォルガ沿岸・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・より堅くされた明日の世界建設のための動力である輪の一くさりとなれる日の来ることをどんなに待望しているでしょう。そのためにも、日本の婦人大衆はよく組織され勇敢聰明に保守勢力とたたかい、日本の民主化を決定的に前進させることを自分たちの責任として・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・最初の部分は、小石川の動力の響が近隣の小工場から響いて来る二階で。中頃の部分は、鎌倉の明月谷の夏。我々は胡瓜と豆腐ばかり食べて、夜になると仕事を始めた。彼女はそっちの部屋でチェホフを。私はこっちの部屋で自分の小説を。蛾が、深夜に向って開け放・・・ 宮本百合子 「シナーニ書店のベンチ」
・・・短波がどうであろうと、一見民衆の生活にかかわりないようないきさつに置かれている。動力の科学的進歩のことにしても、自動車がガソリンでなく薪で走って、坂にかかると肥桶を積んだ牛車に追いこされるという笑話が万更嘘ばかりでもない今日、現象として科学・・・ 宮本百合子 「市民の生活と科学」
・・・これには生活擁護問題の若い人々やその他種々の農民組合、労働組合の若い人々が大きい動力となって働いている。青年の本来の心にある正義心は、自分達の愚弄された青春をわが手にとり戻そうとしてこれ等の動きに現われて来ている。青年団のこれまでの役目は若・・・ 宮本百合子 「青年の生きる道」
・・・その新しい動力となり得る気分を理解し、作品活動の中に正当に導き出して行くことこそ、「現実そのものから現実を描き」批判する方法を学ぶことをたてまえとする社会主義的リアリズムの任務ではなかろうか。 従来私が、自分の書くものについての批評に対・・・ 宮本百合子 「近頃の感想」
出典:青空文庫