・・・ その頃すでに読者から日記や短文の募集をしていた。自分も時に応募していたが、自分の書いた文章が活字になったのは多分それが最初であったと思う。理科大学の二年生で西片町に家を持っていたその頃の日記の一節を「牛頓日記」と名づけて出したことがあ・・・ 寺田寅彦 「明治三十二年頃」
・・・その後ウェストミンスター・アベーに記念の標石を納めようという提議が大学総長や王立協会会長などの間に持出され、その資金が募集された。標石の上の方には横顔を刻したメダリオンが付いている。レーリーの私淑したと思わるるトーマス・ヤングの記念標と丁度・・・ 寺田寅彦 「レーリー卿(Lord Rayleigh)」
・・・でもなかろうから先ぬきとして何か話そう。何がいいか、話そうとすると出ないものでね、困るな。仕方がないから今日起きてから今手紙をかいているまでの出来事を「ほととぎす」で募集する日記体でかいて御目にかけよう。出来事だって風来山人の生活だから面白・・・ 夏目漱石 「倫敦消息」
・・・ 段々発熱の気味を覚えるから、蒲団の上に横たわりながら『日本』募集の桜の歌について論じた。歌界の前途には光明が輝いで居る、と我も人もいう。 本をひろげて冕の図や日蔭のかずらの編んである図などを見た。それについてまた簡単な趣味と複雑な・・・ 正岡子規 「車上の春光」
・・・作家の団体は有志者を募集し、メイエルホリドの若手俳優や劇場労働青年の遠征隊と一緒に、特別仕立の列車で文化宣伝にモスクワを立った。 いろいろ面白い農村新生活の記録の報告が現れた。国立出版所は、五カペイキや二十カペイキの廉価版を作って、それ・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・パリの騒然とした街の様子が彼独特の詳細な筆致でかかれているあとに、市役所のアーク燈に照らされた大階段にぎっしりとつめかけて国民兵の募集に応じようとしている市民の群が描写されている。これらの顔色のわるい人々、折から雨に外套もなくぬれながらなお・・・ 宮本百合子 「折たく柴」
・・・教授や技師や学者たちの間から篤志操作者が募集された。 けれどもX光線の設備に、なくてならない電気さえひかれていないような野戦病院へ殺到して来る負傷者たちをどうしたらいいだろう。キュリー夫人はある事を思いついた。フランス婦人協会の費用で光・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
・・・『文学新聞』は、作家の農村への見学団募集をしはじめた。芸術ウダールニクを組織する必要をその社説に発表した。 ソヴェト市民は、映画のスクリーンの上に見た、まだ雪が真白にのこっている早春の曠野で、疎らな人かげが働いているのを。測量器をか・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・闘争基金千円を募集し食糧を一ヵ月分車輌の中に運び込んでいること。婦人従業員をふくめた自衛団が組織され、全員十六歳から二十五歳という青年だがその統制が整然としていること。職場の特殊性をすべて争議団側に有利なように科学的に利用している点とともに・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・という題で募集した社会主義的都市計画の一つである。 社会主義的都市建設はСССРに於て計画から実現の時代に移っている。ウラル・ドンバッスその他、新興生産中心地ではすでにいくつかの新都市が生れた。そこにモスクワより合理的な生活の新様式があ・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
出典:青空文庫