・・・等の小区分を設けているのである。 映画素材から映画を作り上げる編集方法としてのモンタージュはそもそも映画始まって以来行なわれて来たものに相違ないのであるが、しかし初期の映画において、単に海岸に打ち寄せる波の遊びを見せたり、あるいは舞台演・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・この棒に幾筋も横線を刻んで棒の側面を区分しておいてそれからその一区分ごとに色々な簡単な通信文を書く。例えば第一区には「敵騎兵国境に進入」第二区には「重甲兵来る」と云った風な、最も普通に起り得べき色々な場合を予想してそれに関する通信文を記入し・・・ 寺田寅彦 「変った話」
・・・ワシントンからマウント・ウェザーの気象台へ見学に出かけた田舎廻りのがたがた汽車はアメリカとは思われない旧式の煤けた小さな客車であったが、その客車が二つの仕切りに区分されていて、広い方の入口には「ホワイト」、狭い方には「カラード」という表札が・・・ 寺田寅彦 「チューインガム」
・・・今試みに間隔を一分ごとに区別分類して、各区分内の間隔回数にその区分の平均時間数を乗じたものの和を求めてみると、かりに五分以上の間隔を度外視して計算してみても、二分以下のものに対して二分以上五分までのもののこの積分の比は二三、五と四六、五すな・・・ 寺田寅彦 「電車の混雑について」
・・・山脈や河流の交錯によって細かく区分された地形的単位ごとに小都市の萌芽が発達し、それが後日封建時代の割拠の基礎を作ったであろう。このような地形は漂泊的な民族的習性には適せず、むしろ民族を土着させる傾向をもつと思われる。そうして土着した住民は、・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・男女婚姻して一家に同居し、内外を区分しておの/\其一半を負担し、共に苦楽を与にして心身を労すること正しく同一様なるに、何が故に之を君臣主従の如くならしめんとするか、無稽も亦甚しと言う可し。或は戸外の業務は内事に比して心労大なり、其成跡も又大・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・ 市中を六十四区に分て学校の区分となせしは、かの西洋にていわゆるスクールヂストリックトならん。この一区に一所の小学校を設け、区内の貧富貴賤を問わず、男女生れて七、八歳より十三、四歳にいたる者は、皆、来りて教を受くるを許す。 学校の内・・・ 福沢諭吉 「京都学校の記」
・・・そういう社会的な土台があっての両性の友情感であれば、おのずから恋愛との区分も、感情そのものの質のちがいとして、本人たちもはっきり自覚することができるのだろう。 日本で、さわやかな両性の友情の成り立ちが困難な原因は、もう一つあると思う。そ・・・ 宮本百合子 「異性の友情」
・・・などを事実小説とする斎藤茂吉氏の区分も、私たちには何となしぴったりしない。最後の二作は伝記であると思われる。小説という文字が使われなければならないとすれば、それは伝記小説と呼ばれてはいけないのだろうか。 芥川龍之介が、漱石に推賞され・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
・・・ 現代の日本の文学へは、行動の感覚と未だ区分されていない程度のものとして意力的な感情が少くない分量でもち込まれて来ている。それは、或る場面での実感の肯定として現れて来ている。思意的な生活感情は、そのような実感の吟味から表現されるとともに・・・ 宮本百合子 「現実と文学」
出典:青空文庫