・・・すでにこの学に志してようやくこれを勤むる間には、ようやく真理原則の佳境に入り、苦学すなわち精神を楽しましむるの具となりて、いかにしてもこの楽境を脱すべからず。かえりみて我が身の出処たる古学社会を見れば、その愚鈍暗黒なる、ともに語るに足るべき・・・ 福沢諭吉 「成学即身実業の説、学生諸氏に告ぐ」
物理学とは、天然の原則にもとづき、物の性質を明らかにし、その働を察し、これを採ってもって人事の用に供するの学にして、おのずから他の学問に異なるところのものあり。たとえば今、経済学といい、商売学といい、等しく学の名あれども、・・・ 福沢諭吉 「物理学の要用」
・・・言をかえていえば、それ等社会学、経済学的原則が実行に移されようとする時、乾坤一擲、新たな生命を以て、しんからうまれ変らなければならない根性が、人間の、人生に向かう態度のうちにあるのではないだろうか。その根性がある為に、時代から時代へと、今日・・・ 宮本百合子 「男…は疲れている」
・・・或る百貨店で初給が男より十七銭か女の方がやすくて、原則として対等にしていたが二三年後には男の方がぐっと上になってしまう。その店のひとの話では、どうしても男の店員は生活問題が痛切ですから仕事の上に責任も感じますから、とこういう相異を必然として・・・ 宮本百合子 「女の歴史」
・・・この第一回大会の決議によってエンゲルスが二十五の問答体で「共産主義原則」を書く筈になった。けれども、エンゲルスの意見でこの問答体の書きかたが変更され「共産党宣言」として「共産主義者の政策をのべる」ことが決定された。第二回のロンドン大会に出席・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・社会関係に対して動的な女性、単に習俗にしたがうよりも自分にとって人生の原則と感じられる動機によって行為を選択して生きる女性。ロマン・ロランは、アンネットによって、最も現代史を積極的に生きとおす可能をもった女性の発端の歩みを示したと思われる。・・・ 宮本百合子 「彼女たち・そしてわたしたち」
・・・金のあるひとだけが金を儲けて得ているという今日の冷酷な原則がここにも形をかえてのぞいて来ているのです。 インテリゲンツィアの若い女が勤労者として生活しなければならない必要は、昨今急激に増してきています。しかも、必要によって捕えた職業は常・・・ 宮本百合子 「現実の道」
・・・そのための強国間の協力、原子爆弾の禁止、人種的差別の撤廃、マーシャル・プランの廃止、植民地住民の自治原則確立、日独に対する講和促進と占領軍の撤退、中国における民主的連立政権の樹立、タフト・ハートレー法の撤廃、非米委員会活動の廃止、基本産業の・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・これが徼幸者に対する一つの原則である。そこで私はF君にこんな事を言った。君はドイツ語が好く出来る。私の君を知っているのは只それだけである。それだけでは、君と同居しようとまでは、私には思われない。そこで私は君を、私の心安い宿屋に紹介する。宿屋・・・ 森鴎外 「二人の友」
・・・ 自分は茲では文学的表示としての新しき感覚活動が、文化形式との関係に於ていかに原則的な必然的関連を獲得し、いかに運命的剰余となって新しく文学を価置づけるべきかと云うことについて論じ、併せてそれが個性原理としてどうして世界観念へ同等化し、・・・ 横光利一 「新感覚論」
出典:青空文庫