・・・婦人自身にしても、参政権などよりも、やすいお藷がほしいと云い、それどころか暇がなくて、と、何度云って来たことだろう。それにもかかわらずこういう結果があらわれた。婦人たちが、そんなに急に、自分たちの生活のひどさの理由を発見し、そんなに急に自覚・・・ 宮本百合子 「春遠し」
・・・ 婦人デーのきっかけとなった事件は、一九〇四年三月八日ニューヨーク市の東区の社会主義婦人同盟の人たちが、婦人参政権を要求して立ったことだった。資本主義の国々では、ニューヨークでも、ロンドンでも、イースト・サイドといえば、西区の上流区域と・・・ 宮本百合子 「婦人デーとひな祭」
・・・婦人参政権は文学という問題と違うけれども、政治は毎日の生活を処理して行くものであります、この頃のどさくさで金を儲けている人間もあるが、しかしわれわれはやはり困っています。そういうことについて現実の生活が教えている以上、一葉が文学と生活を一つ・・・ 宮本百合子 「婦人の創造力」
・・・新しい日本が、より人間らしい世界正義の道に立って進んでゆくために、苦難を経験しつつある日本婦人の社会的成長の一つの目標として婦人参政権も認められたとき、私たちは、これからこそ、重苦しい過去の絆をふりはらって、思慮と勇気とに満ち、女らしい聰さ・・・ 宮本百合子 「婦人民主クラブ趣意書」
・・・ 一部のインテリゲンツィア婦人は、婦人参政権獲得同盟というのを結成した。婦人も代議士に選挙されるようになれば、婦人の経済状態を社会的地位、したがって人間としての文化事情も改善し得ると考える人々だ。が、現実にどうしてそんなことが可能だろう・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
日本女性の参政二年を記念して、去る十日にマッカーサー元帥が発したステートメントの言葉は大変に美しく、日本婦人の理想の姿を描き出していたと思います。 あの文章を読んで、日本のまじめな多くの女性は深い感慨に打たれたと思いま・・・ 宮本百合子 「平和を保つため」
若し、今日の議会に、真実な価値と信頼とを認め得るとしたら、婦人の提出したい、第一の問題は、婦人参政権、法律的独立人格の承認に関してであると思います。種々な法規が、消極的意味に於て女性に不便であり或る時は不公平であるとしても・・・ 宮本百合子 「法律的独立人格の承認」
・・・ 婦人に参政権が与えられ、民主日本の成長のために、と、表面にぎやかに啓蒙がされているけれども、婦人の二千九十一万余票を加えて代議士を選出し、成立した議会を、天皇という身分の人が、その意志で解散させることが出来るのだとしたら、何と選挙その・・・ 宮本百合子 「矛盾とその害毒」
・・・これらの事情が、荷風の現実としては「婦人参政権の問題なぞもむしろ当然のこととしているくらいである」が、「然し人間は総じて男女の別なく、いかほど正しい当然な事でも、それをば正当なりと自分からは主張せず出しゃばらずに、どこまでも遠慮深くおとなし・・・ 宮本百合子 「歴史の落穂」
・・・ぜ有名なエレン・ケイ女史などが、二十世紀の初頭に恋愛と結婚を中心に婦人の問題をロマンティックではあるが、女の立場としてとりあげるようになり、イギリスの、パンクハースト夫人がほとんど狂熱的な行動で婦人の参政権を要求しなければいられない気になっ・・・ 宮本百合子 「若い婦人のための書棚」
出典:青空文庫