・・・このことは、現実生活の中では、文部省の教科書取締りにあらわれた、文学の読みかたの、特殊な標準とも関連しているから、各種目の長篇小説の未曾有の氾濫状態の一面に、おのずと、文学とは何であろうかという、文学にとって最も核心にふれた反省が、一般の人・・・ 宮本百合子 「今日の文学と文学賞」
・・・の感情を「取締り」に転化させることのあやまりを警告していた。わたしたちの「驚き」は、反人民的な心理戦術に利用されるほど素朴であってはならない。〔一九四九年七月〕 宮本百合子 「「推理小説」」
・・・その手紙の内容は、ある田舎の荘園で、女主人は病弱なので家政婦が家事取締りしている。その助手と鶏舎の監督をする健康な飽きっぽくない若い婦人を求めているのであった。ジェーンは、その手紙をくりかえしてよんで考える。この手紙には何一つ特別珍しいこと・・・ 宮本百合子 「働く婦人の新しい年」
・・・ 湯浅宮相が女子学習院の卒業式に出席して前例ない峻厳な華族の女の子たちの行紀粛正論をやったということが目立ったぐらいで、敢て道徳問題や親の不取締りとかいう点につき、問題化すものは少く日頃は根掘葉掘りの好きな新聞記者さえ、触れ得ぬ点のある・・・ 宮本百合子 「花のたより」
・・・意見を表示する拍手を一切してはいけないということや、取締り上必要と認めたときには退場させるということなどが、細かい字で印刷されているのである。ほかにすることもないから皆がすなおに出してよみかえした。 やがて一時半となり、今にも、と待つが・・・ 宮本百合子 「待呆け議会風景」
・・・ 炊事場の取締りをやっている肥った小母さんが自分を見て、「どうです? われわれの産院は?」 それから満足そうに笑いながらつけ足した。「御馳走を一つたべて見ませんか?」 コンクリートの廊下を戻って来ると、一つの室のドアが開・・・ 宮本百合子 「モスクワ日記から」
・・・ 企業家のサボタージュを罰することも、是正する力も失っているのに、労働運動取締りの四相声明を公表した当局は、「各種民需産業を振興」というが、どんな成算をもっているのだろうか。元大審院部長・元司法次官三宅正太郎という人が、中央労働委員会の・・・ 宮本百合子 「モラトリアム質疑」
・・・「流言蜚語の取締り」は恐ろしく綿密であった。流言蜚語は、事実にないことを流布する一つの場合に当嵌められた言い方である。けれども、当時の日本の流言蜚語はその内容が違っていた。社会に対する正当の批評、希望もそれは取締られる「流言蜚語」の中に・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫