・・・ さて叔父さんたちの持ち場も定まって、今井の叔父さんは、今鹿の逃げて行った方の丘を受け持つ事になったから僕は叔父さんと二人してほとんど足も入れられないような草藪の中をかき分け踏み分けやっとの思いで程よいところに持ち場の本陣を据えた。・・・ 国木田独歩 「鹿狩り」
・・・表紙画は順番で受け持つ事になっているらしい。 出品画を書いているうちは、ひどく人の見るのを厭がって、みんな方々の部屋の隅へ頭をつっこんで描いていた。時々兄さん達が無理に覗きに来ていけないという訴えが小さい子等から母や祖母の前に提出されて・・・ 寺田寅彦 「小さな出来事」
・・・ 電話が二度も演舞場からかかってきて、何やらの踊りの鼓を受け持つことになっている歌子の来ようが遅いので、一度は後と廻しにしたけれど、早く来てくれないと困るというのであった。「今使いを出しましたから、帰ってくるとすぐ上げます。お気の毒・・・ 徳田秋声 「挿話」
・・・家庭生活の中でもいわゆる実際的なことを男よりも多く受持つのであるけれども、それが女の生活における現実の豊かさとして実って来ないのはなぜであろう。面白いお婆さんよりもいやなお婆さんの方が多いというのはなぜであろう。ふざけて男の人たちが、困った・・・ 宮本百合子 「山の彼方は」
出典:青空文庫