・・・ なかなかもって、どうして古狸の老武者が、そんな事で行くものか。「これは堅い、堅い。」「巌丈な金具じゃええ。」 それ言わぬ事ではない。「こりゃ開かぬ、鍵が締まってるんじゃい。」 と一まず手を引いたのは、茶紬の親仁で。・・・ 泉鏡花 「革鞄の怪」
・・・ かれらは叫んだ、『何だ古狸!』 そこでかれはだれもかれを信ずるものがないのに失望してますます怒り、憤り、上気あがって、そしてこの一条を絶えず人に語った。 日が暮れかかった。帰路につくべき時になった。かれは近隣のもの三人と同・・・ 著:モーパッサン ギ・ド 訳:国木田独歩 「糸くず」
出典:青空文庫