・・・娘に対して最も寛容でないのは、神の召使いである父親であった。 ある日、不幸な女主人公は、小さい赤ン坊をつれて動物園へ行っていた。そこで、偶然彼女の知り合いである同じ年ごろの女性とその愛人とに出会った。友達である女は、愛人に向って、自分た・・・ 宮本百合子 「傷だらけの足」
・・・ 群像を仕上げたスーは、ついに息子のジョン、娘のマーシャ、忠実な召使いのジェーンをつれてパリへ赴いた。一年分の金がある。その一年に、次の一年分を働き出さなければならない。スーザンは或るフランス人の仕事場に通って種々の専門技術を身につけた・・・ 宮本百合子 「『この心の誇り』」
・・・家は馬籠の旧本陣で、そこの大規模な家の構え、召使いなどの有様は、「生い立ちの記」の中にこまかく描かれている。父というひとは、「それは厳格で」「家族のものに対しては絶対の主権者で、私達に対しては又、熱心な教育者で」あった。髪なども長くして、そ・・・ 宮本百合子 「藤村の文学にうつる自然」
・・・のためにどんな犠牲をもとめられているかということも、手にとるようにわかるし、男女の召使いたちの、奴隷としての悲惨な位置も描き出されている。けれども、こういう重苦しい大家族主義のなかで、妻である女性は、やはり実家の姓を頂いているし、戦乱などの・・・ 宮本百合子 「離婚について」
出典:青空文庫