・・・ 第一質屋がそれであります。合法的に店を張っているには相違ないけれど、苦しい中から、利子を収めて、さらに品物を受出すということが、すでにそうした境遇に於かれている者には、殆んど不可能のことでした。不意に、沢山の金がはいるようなことでもな・・・ 小川未明 「貧乏線に終始して」
・・・殊に、現在の、深刻な農業恐慌の下で、負担のやり場を両肩におッかぶせられて餓死しないのがむしろ不思議な農民の生活、合法無産政党を以て労農提携の問題をごま化し去ろうとする社会民主主義者共の偽まんを突破して真に階級性を持った提携に向って進んでいる・・・ 黒島伝治 「農民文学の問題」
・・・当時の生活は、時間的に寸断されていた上に、一つの作品を完成させるに必要な作者の一貫した生活気分が合法生活と非合法生活との間にわけられていて、それ自身一つの客観な一つの世界としてかたちづくられなければならない作品はまとまらなかった。 この・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
・・・文化団体は合法的でやッつける口実がない。だから、そういう風に問題をこんぐらかし、大衆の目に何が何だか判らなくしておいて、かげで軍事的暴圧を振うのです。 八十日の間、私と作家同盟、文新、「コップ」の同志との連絡は完全に絶たれ、外の様子は駒・・・ 宮本百合子 「逆襲をもって私は戦います」
・・・ 同じ三・一五の被告であった徳田球一、志賀義雄などの人々が、永い獄中生活にもかかわらず、一九四五年十月に解放されてからすぐ共産党の合法的活動に着手したことを思いあわせると、私たちは同じ共産党員といわれる人々の中に、非常な大きい差別がある・・・ 宮本百合子 「共産党とモラル」
・・・「――非合法出版物へ書いてるじゃないか」「知らない」「だァって」 中川はさも確信ありげに顎でしゃくうように笑って、「現に君から原稿を貰った人間があるんだから仕様がないじゃないか」「……そりゃ今の世の中には、いろんな種・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・昔のプロレタリア文学運動の時代は、日本のすべての解放運動が非合法におかれていたために、たとえば『戦旗』は階級的な文化の文学雑誌であるとともに、その半面では労働者階級の経済、政治の国際的な啓蒙誌でもあった。『ナップ』『プロレタリア文学』もそれ・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・ 女の中に予期された母性の経済的独立を保証する為、離婚法は、女に職業能力がない場合、一年間生活保証すべき義務を夫に示している。 合法的人工流産は、これ等数種の積極的条件の最後にあって、母性の擁護と秘密な罪悪の防止に役立てられている。・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・この生きた関係は、現在の日本の社会感情や、前衛党とその外との知的関係のありかたのすこし前方に進出したものである。合法党として存在しはじめてわずか一年を経たばかりの日本の党が、よしんばまだ十分豊饒な文化性を溢れさせていないとして、また組織人の・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・小林多喜二の時代非合法であった共産党は、今日合法政党として存在し、工場細胞は公然です。非合法だった時代の党の気の毒な官僚主義、ヒロイズム、独善などがかりに小林多喜二の「工場細胞」に反映しているならば、小林多喜二的身がまえによって――積極的に・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
出典:青空文庫