・・・もし、芸術が真の発見であり、創意であり、作家の熱烈なる要求であることの代りに、通俗への合流に過ぎぬとしたら、何の教化ということもないでありましょう。 芸術は、凡俗生活に対する反抗からはじまったと見るべきが本当であります。今日の文化が、兎・・・ 小川未明 「作家としての問題」
・・・は熔岩流が山の谷や沢を求めて合流あるいは分流するさまを暗示する。「またその身に蘿また檜榲生い」というのは熔岩流の表面の峨々たる起伏の形容とも見られなくはない。「その長さ谿八谷峡八尾をわたりて」は、そのままにして解釈はいらない。「その腹をみれ・・・ 寺田寅彦 「神話と地球物理学」
・・・それと同時に多種多様な民族の色々な文化の流れがこの極東の細長い島環国の中に合流し集注したであろう。従って我等の国語にはあらゆる民族の言語が混淆し融合してしまって、今となっては容易に分析することが出来ないようになってしまっているように思われる・・・ 寺田寅彦 「短歌の詩形」
・・・川の合流。甲殿 「コタン」は村。またマレイで「コタ」は町。またビルマ語で「コーンダーン」は小さき山脈。和喰 「ワシ」波浪「ケプ」破れる。また「ケ」場所。奴田 「ヌ」頂の平たき山「タプ」円頂丘。日下 「クサハ」河を渡船で渡る。・・・ 寺田寅彦 「土佐の地名」
・・・次の問題は水滴が多量になると、それが自分の重さでガラス面に沿うて流れおりて来る際に、いくつかの水滴が時々互いに合流しきれいな樹枝状の模様を作るのであるが、それがその時々でまたいろいろの模様の変化を示し、しかも同じ時にはおのずから一定の統計的・・・ 寺田寅彦 「日常身辺の物理的諸問題」
・・・それが貞門談林を経て芭蕉という一つの大きな淵に合流し融合した観がある。この合流点を通った後に俳諧は再び四方に分散していくつもの別々の細流に分かれたようにも思われる。 一方において記紀万葉以来の詩に現われた民族的国民的に固有な人世観世界観・・・ 寺田寅彦 「俳諧の本質的概論」
・・・その際に露の流れが次第に合流して樹枝状の模様を作る。この場合は前の多くの場合とは反対に枝の末端のほうから樹幹のほうへ事がらが進行するので、この点でも地上の斜面に発達する河流の樹枝状系統によく似ている。 これらの現象を通じて言われることは・・・ 寺田寅彦 「物理学圏外の物理的現象」
・・・総同盟は、自分たちの内部で丈単一組合化をやるので、他の系統の組合と合流した単一化になるのではないようです。従って、総同盟単一組合中の婦人部の問題はイゼンとしてあるわけです。お話のきき間違いかとも思って、一寸。・・・ 宮本百合子 「往復帖」
・・・と合流して初めて「共産主義者同盟」を創った。この第一回大会の決議によってエンゲルスが二十五の問答体で「共産主義原則」を書く筈になった。けれども、エンゲルスの意見でこの問答体の書きかたが変更され「共産党宣言」として「共産主義者の政策をのべる」・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・ 二 前年までの肉体文学は、よりひろい風俗文学、中間小説とよばれる読もの小説の氾濫に合流した。これらの文学は、戦争中、こぞってそのほとんどが戦争肯定をしていたように、きょうはきょうなりのなまぐさい風のまにま・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
出典:青空文庫