・・・ 私がこの農場を何とか処分するとのことは新聞にも出たから、諸君もどうすることかといろいろ考えておられたろうし、また先ごろは農場監督の吉川氏から、氏としての考えを述べられたはずだから、私の処分についての、だいたいの様子はわかっておられたか・・・ 有島武郎 「小作人への告別」
・・・「何だ、吉川はかくれて煙草をのんでいたんか――俺に残りをよこせ!」 白樺の下で、軍曹が笑い声でこんなことを云っているのが栗本に聞えてきた。 栗本は銃を杖にして立ち上った。 兵士達は、靴を引きずりながら、草の上を進んだ。彼等は・・・ 黒島伝治 「パルチザン・ウォルコフ」
・・・ 今日、諸雑誌や新聞の上に溢れているルポルタージュは、そういう本来の特質に対して、どういう現れを示しているであろうか。 吉川英治、林房雄、尾崎士郎、榊山潤の諸氏によって、作家の戦線ルポルタージュは色どり華やかである。綜合雑誌の読者は・・・ 宮本百合子 「明日の言葉」
・・・ 国内における文化統制の具体化は、国際文化振興会の成立以前、既に前年松本学氏が警保局長であった当時、故直木三十五氏や三上於菟吉、佐藤春夫、吉川英治諸氏と提携して「文芸院」設立を目論んだ時から端を発している。当時、既に正宗白鳥氏その他が現・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・を「絶讚した」吉川英治、林房雄などからは何の発言もない。 八月号の『世界評論』丹羽文雄氏の小説「一時機」と、七、八月『時論』にのった山口一太郎元大尉の二・二六事件の真相「嵐はかくして起きた」「嵐のあとさき」をよみくらべた人はそこに不可解・・・ 宮本百合子 「作家は戦争挑発とたたかう」
・・・「大衆の批判というものがどんなものか、我国の場合で考えても、志賀直哉と吉川英治を国民大衆の討議にかければ、後者が選ばれること論をまたない」と。 小原壮助が、社会機構や生活感情のすべての、まるでちがう「我国の場合」を躊躇なく例としてひいて・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・や一頁人物評、吉川英治についての書きぶりなど、もう少し含蓄をもって読者の頭にきざみつけられるような筆致が更に効果的であったろうと考えられた。 この雑誌のみならず、すべての雑誌が、もっともっと沢山わかり易い自然科学に関する記事、世界の人類・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
・・・正宗白鳥は、菊池が自身の側においたような風でいっている警保局云々の考えかたを、そのようにケシかけたりするのは意外のようであるとし、山本有三、佐藤春夫、三上於菟吉、吉川英治その他が組織した文芸院の仕事の価値をも言外にふくめて「文学者がさもしい・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・ 吉川英治は、なぜ「太閤記」「三国志」「親鸞」「宮本武蔵」というような題材ばかりを選ぶだろうか。それは封建時代の昔から、「百姓、町人」の間にききつたえられ、語りつたえられているテーマだからである。「太閤記」は古く日本につたわっている。芝・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・直木三十五、吉川英治らが明治維新を「王政復古の名によって描き出し、帝国主義段階の今日において大衆のファッショ化を積極的に強化しようとはかっている。」この現実の闘争におけるモメントこそわれわれプロレタリア作家に正しい歴史小説を書くべき任務を負・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
出典:青空文庫