・・・を作っているが、これを間断なく見守っていない他人に向かって子供の時の顔と今の顔とを切り離して見せてそれが同人だという事を科学的理論的に証明しようとしたらずいぶん困難な事だろう。何十年来一つ家に暮らした親にでも、自分がある夜中に突然入れ換わっ・・・ 寺田寅彦 「自画像」
・・・ 石井氏の「二科同人群像」には単なる似顔の集成でなく、各メンバーの排置のみならずそのポーズや服装によって各自の個性を表現しようという苦心の痕が覗われる。とにかく、このような同人群像を試みるとしてはおそらく最も適任な石井氏が更に研究を重ね・・・ 寺田寅彦 「二科展院展急行瞥見記」
・・・の遺伝を濃厚に受けており、同人の「おもい切ったる死にぐるい」がやはり前々句の去来の「いまや別れの刀さし出す」の純然たる申し子であるがごときはなかなか興味ある事実である。 まだ充分数量的に調べたわけでないから確実なことは言われないのである・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・死したる人の蘇る時に、昔しの我と今の我との、あるは別人の如く、あるは同人の如く、繋ぐ鎖りは情けなく切れて、然も何等かの関係あるべしと思い惑う様である。半時なりとも死せる人の頭脳には、喜怒哀楽の影は宿るまい。空しき心のふと吾に帰りて在りし昔を・・・ 夏目漱石 「幻影の盾」
・・・雪嶺さんの子分――子分というと何だか博奕打のようでおかしいが、――まあ同人といったようなものでしょう、どうしても取り消せというのです。それが事実の問題ならもっともですけれども、批評なんだから仕方がないじゃありませんか。私の方ではこちらの自由・・・ 夏目漱石 「私の個人主義」
・・・そこで、内的な私自身のことをお話するよりも、もっと一般的な意味で、私の見て来た彼方の同人雑誌のことをほんの少しだけ申してみましょう。 彼方でもやはり日本と同じように、『文章倶楽部』のような雑誌もありますし、また『奇蹟』とか『異象』とかい・・・ 宮本百合子 「アメリカ文士気質」
・・・まして『檜の影』の同人でいられる方々の御生活、生きゆく思いの痛切なことは、言葉をつくせず、それだからこそ、存在のあかしとして作歌されつつあると信じます。それは格調の緊密なアララギにひかれるのもよくわかります。しかし緊密であるというのは、歌の・・・ 宮本百合子 「歌集『仰日』の著者に」
・・・皮肉なことは、戦後派とよばれた近代文学同人たちの大部分が、前年の下半期から一九四九年をとおして、インテリゲンチャとしてそれぞれに着目すべき社会的文学的前進を行っていたことである。個人主義の開花時代の近代ヨーロッパの文学精神を、日本で窒息させ・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・近頃の同人雑誌の小説について語られていることなのであるが、それらの言葉をじっくりと胸にうけとって考え深めて行って見ると、日本の現代文学がもっている次の世代の精神の地味ということについて、何かこわいようなところがある。 何もこの人が書かな・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・ 今日の国家経済の方針に依って、文化の大衆化に重大な関係を持っている紙と印刷費用とは高騰する一方であるから、一時のように同人雑誌の刊行も困難になり、他面発表機関も困難になることから、雑誌を持っていてその誌上を割き与えることの出来る作家の・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
出典:青空文庫