・・・ ――――――――――――――――――――――――― 同日、田中宇左衛門は、板倉式部の屋敷で、縛り首に処せられた。これは「修理病気に付、禁足申付候様にと屹度、板倉佐渡守兼ねて申渡置候処、自身の計らいにて登城させ候・・・ 芥川竜之介 「忠義」
・・・もっともアレだけの巻数を重ねたのはやはり相当の人気があったのであろうが、極めて空疎な武勇談を反覆するのみで曲亭の作と同日に語るべきものではない。『八犬伝』もまた末尾に近づくにしたがって強弩の末魯縞を穿つあたわざる憾みが些かないではないが、二・・・ 内田魯庵 「八犬伝談余」
・・・ 第三報、四月二十八日午後三時五分発、同月同日午後九時二十五分着。敵は靉河右岸に沿い九連城以北に工事を継続しつつあり、二十八日も時々砲撃しつつあり、二十六日九里島対岸においてたおれたる敵の馬匹九十五頭、ほかに生馬六頭を得たり――「ど・・・ 国木田独歩 「号外」
・・・午後三時に政府は臨時震災救護事務局というものを組織し、さしあたり九百五十万円の救護資金を支出して、り災者へ食糧、飲料水をくばり、傷病者の手あて以下、交通、通信、衛生、防備、警備の手くばりをつけました。同日午後五時に、山本伯の内閣が出来上り、・・・ 鈴木三重吉 「大震火災記」
・・・ことにも江戸は半丁あるくと他郷だと言われるほどの籠みあったところなのに、こうしてせまい居酒屋に同日同時刻に落ち合せたというのは不思議なくらいです。太郎は大きいあくびをしてから、のろのろ答えた。おれは酒が好きだから呑むのだよ。そんなに人の顔を・・・ 太宰治 「ロマネスク」
・・・となるであろう。この二つのものはしかし必ずしも互いに相容れないものではないように私には思われるのである。 三「青い天使」と同日に「モンテカルロ」を見たのもおもしろい取り合わせであった。古典音楽のあとでジャズを・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・しかし、おかしいことには、これと同日同所で見せられたアメリカ映画「流行の王様」に、やはり同様に破産した事務所の家具が運び出される滑稽な光景がある。人夫がヒーローの帽子を失敬しようとする点まで全く同工異曲である。これは偶然なのか、それともプロ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・「それで時間を調べて見ると細君が息を引き取ったのと夫が鏡を眺めたのが同日同刻になっている」「いよいよ不思議だな」この時に至っては真面目に不思議と思い出した。「しかしそんな事が有り得る事かな」と念のため津田君に聞いて見る。「ここに・・・ 夏目漱石 「琴のそら音」
・・・二博士が余の意見を当局に伝えたる結果として、同日午後に、余はまた福原専門学務局長の来訪を受けた。局長は余に文部省の意志を告げ、余はまた局長に余の所見を繰返して、相互の見解の相互に異なるを遺憾とする旨を述べ合って別れた。 翌十二日に至って・・・ 夏目漱石 「博士問題の成行」
・・・隣家の貧富は我家の利害に関係なしと雖も、夫の婬乱不品行は直接に妻の権利を害するものにして、固より同日の論に非ず。抑も一夫一婦家に居て偕老同穴は結婚の契約なるに、其夫婦の一方が契約を無視し敢て婬乱不品行を恣にし他の一方を疏外するが如きは、即ち・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
出典:青空文庫