・・・長をしていた思想検事の長谷川劉が、現在最高裁判所のメムバーであって、さきごろ、柔道家であり、漫談家、作家である石黒敬七、富田常雄などと会談して、ペン・ワン・クラブというものをつくることを提案している。名目は、腕力のあるペン・マンによって、盛・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・責任を問うための警告的処罰であるならば、現政府の中に今もなおさまざまの名目の下に止っている戦争犯罪者、その協力者たちを、警告処罰すべきではなかろうか。私たち通常人の公憤は、そのように告げるのである。 この不運な母子の一事件は、実に多くの・・・ 宮本百合子 「石を投ぐるもの」
・・・都会では、処々に庭と云う名目の下に切り遺された大自然の一部が、辛うじて、大地から湧く生命の泉を守って居る。私は、衝動的に、晴々と拘りない地平線を飽くほど眺めたい渇望を感じた。大らかな天蓋のように私共の頭上に懸って居べき青空は、まるで本来の光・・・ 宮本百合子 「餌」
・・・今日封建性に反対するという名目で私たちの間に性的な放恣がないであろうか。インフレーションはたれの経済生活をもうちこわしている。インフレーションに名をかりて、金の上でのルーズさが案外見のがされているところがあるのではないだろうか。勤労階級の解・・・ 宮本百合子 「共産党とモラル」
・・・明治維新によって、名目上の民権が認められ、新しい日本を建設しようという希望に燃えた一団の人々は明治十四年自由党を結成した。有名な中島湘煙が十九歳で政談演説を行い、婦人政治家として全国遊説をし、岡山に女子親睦会というのが出来た。成田梅子は、仙・・・ 宮本百合子 「現実に立って」
・・・精神のラッシュにまぎれて、いかがわしい種々の操作が、今日では法律上の名目も失い、行政上の格式も失いながら、なお最下等動物のように執拗に、ぬけめない陋劣さで活躍していることも、人々が直感しているところである。 日本にとって、本当にすがすが・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・ 一九二一年に起ったクロンシュタットの赤色海軍兵の局部的な暴動は、ソヴェト同盟国内戦後の饑饉救援という名目でアメリカから、妙な連中が入り込んだ。アメリカ毛布、アメリカ製ビスケットにかこつけたからくりが、この暴動の種であったということを今・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・すると、直ちにそれを共産党の蜂起とデマり、鎮圧の名目で軍隊を繰り出し、市街戦で革命的労働者、前衛を虐殺し、それをきっかけに戒厳令をも布く。そのような計画が予定のうちにあるキッカケの為に、赤松は総同盟の労働者を最も値よく売ろうとしている、と云・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・しかし、現在の日本の全人民生活を危機に陥れているインフレーションは、これらの名目上の婦人解放の実現を、非常に困難にしています。一日一日と騰貴する物価に、決して追いつくことのない待遇改善の実情は、妻であり母である女性の辛苦を言語に絶した状態に・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・ストライキと農村争議は、挙国一致の時という名目の下に今までより一層惨酷なる白テロで潰される。 支配階級のファッショ化に抗して日本のプロレタリア・農民は決意的闘いを闘おうとしているのだ。 こういう切迫した情勢の下に、三月八日の国際婦人・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
出典:青空文庫